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腟内フローラ・ラクトバチルス

20〜30代とラクトバチルス|腟内フローラと妊娠を迎える体づくり

20〜30代女性と腟内フローラのイメージ

20〜30代は、女性の体が最も充実する「生殖期」です。

エストロゲンの分泌が安定し、卵巣、子宮、腟が本来の力を十分に発揮できる時期でもあります。

一方で、この年代は進学、就職、結婚、妊娠、出産など、人生の大きな節目が次々に訪れる時期でもあります。

生活環境や人間関係が大きく変化し、その変化は、目には見えない「腟内フローラ」にも少なからず影響を与えています。

近年、「腸活」という言葉は広く知られるようになりましたが、女性にとっては「腟活」も同じくらい大切です。

健康な腟内環境は、腟炎や感染症のリスクを下げるだけでなく、将来の妊娠や出産にも深く関わっていることが少しずつ明らかになってきています。

腟内フローラについて

ラクトバチルスの基本的な働き、腟内フローラ、子宮内フローラとの関係については、ラクトバチルスとは?ラクトバチルス菌の働き・増やす方法で詳しく解説しています。

ラクトバチルスが最も活躍する年代

20〜30代の健康な女性では、腟内にラクトバチルスが豊富に存在しています。

ラクトバチルスは腟上皮細胞に蓄えられたグリコーゲンを利用して乳酸を産生し、腟内をpH 3.8〜4.5程度の酸性に保っています。

この酸性環境は、人間が長い進化の中で獲得した優れた防御機構です。

腟内が酸性に保たれることで、次のような働きがあります。

  • 病原菌や雑菌の増殖を抑える
  • 腟炎を起こしにくくする
  • 一部の感染症リスク低下との関連が報告されている
  • 炎症を起こしにくい環境を保つ

つまりラクトバチルスは、毎日24時間休むことなく女性を守ってくれている「見えない守護菌」といえるでしょう。

腟が酸性に保たれる理由

腟の自浄作用や、酸性環境が女性の身体を守る仕組みについては、腟の自浄作用とは?酸性環境とラクトバチルスが女性を守る仕組みも参考にしてください。

性交渉は腟内環境に大きな変化をもたらす

性交渉が始まると、腟内には新たな環境変化が起こります。

精液はpH 7〜8前後のアルカリ性です。

これは決して悪いことではありません。

精子は酸性環境では生きることが難しいため、アルカリ性の精液が腟内を一時的に中和し、精子を守りながら子宮へ送り届ける役割を担っています。

さらに排卵期には、頸管粘液もアルカリ性に変化します。

これは精子が子宮へ到達しやすくするための、生殖にとって非常に合理的な仕組みです。

つまり妊娠を成立させるためには、一時的に腟内がアルカリ側へ傾く必要があります。

しかし、その状態が長く続いてしまうと問題が起こります。

アルカリ性に傾いた状態ではラクトバチルスが減少し、嫌気性菌やその他の雑菌が増えやすくなります。

そのため健康な女性では、性交後しばらくするとラクトバチルスが再び乳酸を作り、腟内を酸性へ戻していきます。

この「元に戻す力」が十分に働いていることが、女性の健康を維持するうえで非常に重要なのです。

性交後の違和感が気になる方へ

性交後に腟炎や膀胱炎のような症状を繰り返す方は、性交後に腟炎・膀胱炎を繰り返す原因と対策も参考にしてください。

腟から子宮へ続く細菌の世界

以前は、「子宮の中は完全に無菌」と考えられていました。

しかし近年の遺伝子解析技術の進歩により、健康な子宮内膜にも細菌叢が存在する可能性が示されるようになりました。

その中でも特に注目されているのが、Lactobacillus crispatus(ラクトバチルス・クリスパタス)です。

クリスパタスが優勢な女性では、次のような報告があります。

  • 子宮内膜の炎症が少ない
  • 良好な着床環境が保たれやすい
  • 妊娠成立との関連が研究されている

もちろん、子宮内膜細菌叢については、まだ研究が続いている分野であり、すべてが解明されたわけではありません。

しかし、「妊娠は子宮だけではなく、腟から続く細菌環境全体で支えられている」という考え方は、今後ますます重要になっていくでしょう。

性感染症は未来の妊娠にも影響する

20〜30代で特に注意したいのが、性感染症です。

クラミジア感染症や淋菌感染症は、自覚症状がほとんどないまま進行することがあります。

感染が子宮、卵管、骨盤内まで広がると、骨盤内炎症性疾患(PID)を引き起こし、卵管の癒着や閉塞につながることがあります。

その結果、次のような影響が出ることもあります。

  • 自然妊娠しにくくなる
  • 子宮外妊娠のリスクが上がる
  • 慢性的な骨盤痛が残る

ラクトバチルスが豊富な腟内では病原菌が定着しにくいことが知られていますが、ラクトバチルスだけで性感染症を防げるわけではありません。

パートナーとともに性感染症について正しい知識を持ち、必要に応じて検査を受けることが、将来の妊娠を守ることにつながります。

妊娠は「偶然」だけではない

外来では、「なかなか妊娠できません」というご相談を受けることが少なくありません。

もちろん、年齢や卵子の質、精子の状態、卵管や子宮の問題など、妊娠にはさまざまな要因が関わります。

しかし、その土台となる腟内環境を整えておくことは、決して無駄にはならないと私は考えています。

毎日の生活の中で、次のような積み重ねがラクトバチルスを元気に育てる生活につながります。

ラクトバチルスを育てる生活習慣

  • 十分な睡眠をとる
  • バランスのよい食事を意識する
  • 適度な運動を続ける
  • 過度な洗浄を避ける
  • 腟内の酸性環境を守る
  • 必要以上の抗菌薬を避ける
  • 性感染症を予防する

現代女性が失いつつある「自然」

昔の女性が必ずしも楽だったわけではありません。

しかし現代女性は、それとは異なる大きな負担を抱えています。

仕事、家事、育児、介護、キャリア形成、人間関係……。

一人で何役もこなしながら、毎日を過ごしています。

慢性的な睡眠不足やストレスはホルモンバランスにも影響し、自律神経を乱し、腟内フローラにも影響を与える可能性があります。

不妊治療を受ける女性は年々増えています。

医療は日々進歩し、多くの命が誕生しています。

一方で私は、「治療が必要になる前にできること」をもっと大切にしたいと思っています。

女性が本来持っている力を十分に発揮できる環境を整えること。

それが、本当の意味でのプレコンセプションケアではないでしょうか。

ラクトバチルスは未来の命を守るパートナー

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私は毎日外来で、多くの女性とお会いしています。

その中で感じるのは、女性はもっと自分の体を大切にしてよいということです。

腟内フローラは目には見えません。

しかし、その働きは私たちの健康、妊娠、出産、そして次の世代へと続く命を静かに支えています。

ラクトバチルスを育てることは、単に腟炎を予防することではありません。

未来の自分自身を守り、将来妊娠を望むときに、命を迎える準備にもつながります。

自然の力を最大限に引き出し、本来女性が持っている体の仕組みを大切にすること。

私はそのお手伝いをすることが、産婦人科医としての大切な役割だと考えています。

妊娠を望む女性が安心して自分の体と向き合い、納得できる選択ができる社会になることを願いながら、これからも「ラクトバチルスとともに生きる女性の健康」を伝え続けていきたいと思います。

気になる症状がある場合は婦人科でご相談ください

おりもののにおい、かゆみ、ヒリヒリ感、性交後の違和感、不正出血、下腹部痛などが続く場合は、腟内フローラだけでなく、感染症や炎症などが関係していることもあります。自己判断せず、必要に応じて婦人科で原因を確認しましょう。

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ラクトバチルスと腟内フローラの基本については、ラクトバチルスとは?ラクトバチルス菌の働き・増やす方法をご覧ください。

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院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
産前産後から更年期まで、女性のライフステージに寄り添う診療と情報発信に取り組んでいます。性交痛、外陰部・腟まわりの痛み、デリケートゾーンの違和感など、相談しづらいお悩みにも丁寧に対応しています。

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