若い女性の性交痛外来で感じること|「自分の性器を見たことがない」という現実
更新日:2026.06.14
最近、性交痛外来に若い女性が多く来院されるようになりました。
診察の中で驚くのは、
- 「自分の性器を見たことがありません」
- 「触ったことがありません」
- 「どう洗えばいいのかわかりません」
という方が少なくないことです。
私は産婦人科医として、長年多くの女性を診療してきましたが、近年その傾向が強くなっているように感じています。
なぜなのでしょうか。
日本では昔から、性器について話すことがタブー視される風潮がありました。
- 「見てはいけない」
- 「触ってはいけない」
- 「恥ずかしい場所」
そのような価値観の中で育った結果、自分の身体でありながら、外陰部について知る機会を持たずに大人になる女性が少なくないのです。
さらに、
「性器は石けんで洗ってはいけない」
という言葉もよく耳にします。
この言葉には、本来2つの意味が含まれていたのではないかと思います。
1つは、
「過度に興味を持たなくてよい」
という昔ながらの価値観。
もう1つは、
「強い石けんで洗いすぎると、皮膚や腟内の環境を傷つける」
という医学的な意味です。
しかし、その2つが混ざり合うことで、
「外陰部は洗ってはいけない場所」
という誤解につながってしまったのかもしれません。
もちろん、外陰部は身体の一部です。
顔や手を洗うのと同じように、適切なケアが必要な場所です。
外陰部には汗や皮脂、おりもの、尿などが付着します。
適切に洗浄しなければ、においやかゆみ、不快感の原因になることもあります。
私は外来で、まず患者さんに
「自分の外陰部を知ること」
の大切さをお話ししています。
- 鏡で見てみる。
- 優しく触れてみる。
- どこが小陰唇で、どこが腟の入口なのかを知る。
それだけでも大きな一歩です。
また、外陰部周囲の血流を良くするために、大腿内側、つまり太ももの内側のマッサージをお勧めすることもあります。
血流が改善すると、皮膚や粘膜の状態が整いやすくなり、自分の身体への意識も高まります。
洗浄については、刺激の少ない弱酸性の洗浄剤を使用し、外陰部から腟口周囲まで優しく洗うことをお勧めしています。
小陰唇のひだの間には、皮脂や分泌物が蓄積することもあります。
そのような場合には、保湿剤などで柔らかくしてから、無理のない範囲で丁寧にケアすることが役立つこともあります。
大切なのは、「汚れを取ること」だけではありません。
適切なケアによって、
- においが気にならなくなる。
- かゆみや違和感が減る。
そして何より、
「自分の身体に対する抵抗感が少なくなる」
ことが重要だと思っています。
性交痛の治療というと、薬やレーザー治療を思い浮かべる方も多いでしょう。
もちろん、それらも大切な治療です。
しかし私は、性交痛改善の第一歩は、
「自分の身体を知り、自分の身体を大切にすること」
だと考えています。
外陰部は恥ずかしい場所ではありません。
女性の健康を支える大切な身体の一部です。
これからも外来を通じて、女性が自分の身体を正しく知り、自信を持ってケアできるよう、お手伝いを続けていきたいと思います。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。



