若い女性たちの「痛み」に向き合って
更新日:2026.05.27
皆さんに共通しているのは、「性交渉ができない」「痛くてつらい」
という悩みを抱えながらも、誰に相談してよいかわからず、一人で悩み続けてきたということです。
私は産婦人科医として、約30年間診療を続けてきました。
しかし正直に言うと、
「性交痛とは本当はどこの痛みなのか」
を真剣に考えるようになったのは、ここ数年のことです。
子宮頸がん検診で感じる「痛み」の正体
これまで私は、子宮頸がん検診で「とても痛かった」という患者様にたくさん出会ってきました。
しかし、診察器具を小さくし、丁寧に、そっと診察すると、
「今日は全然痛くなかったです」
と言われることも少なくありませんでした。
では、その痛みの正体は何だったのでしょうか。
実際に多くの患者様を診察し、痛みの部位を一緒に確認していくうちに、ある傾向が見えてきました。
最も多いのは「前庭部」の痛み
大陰唇に強い痛みを感じる方は、それほど多くありません。一方で、小陰唇の外側面は、萎縮が強い方に痛みが見られることがあります。
そして最も多いのが、小陰唇の内側から膣口周囲、いわゆる「前庭部」と呼ばれるエリアの痛みです。
特に20代前半で「性交渉ができない」と相談に来られる患者様では、実に90%以上の方がこの部分に痛みを訴えます。
性交痛は「膣の奥の痛み」だけではない
私は長い間、性交痛とは「膣壁が広げられることによる痛み」だと思っていました。だからこそ、ダイレーターを使用して膣を拡張することが、根本治療だと考えていました。
しかし、実際に患者様のお話を聞き、丁寧に診察を重ねていくと、どうも違うようなのです。
多くの方は、膣の奥が広がることよりも、膣口周囲が引っ張られる感覚や、擦れる感覚を非常につらいと感じています。
このことに気づいてから、私は治療の考え方が少し変わりました。
まずは自分の身体を知ることから
まずは前庭部を意識すること。清潔に保ちながら、優しく触れてみること。
そして、マッサージを習慣にして、自分の身体を知ること。
こうしたホームケアだけでも、痛みが軽減する患者様が少なくありません。
さらに、どうしても痛みが改善しない場合には、レーザー治療によって症状が緩和される可能性も見えてきました。
若い女性には、若い女性に合ったケアが必要
更年期以降の性交痛では、外陰部の菲薄化や裂傷、組織の引きつれなどが大きな原因になります。しかし、若い女性の性交痛には、それとは少し異なる病態があるように感じています。
だからこそ、若い女性には、若い女性に合った治療やケアが必要なのだと思います。
私は、彼女たちが性交という大切なコミュニケーションを、恐れずに持てるようになってほしいと願っています。
それは単に、性交渉のためではありません。
自分の身体を知り、自分を大切にし、愛する人との関係を育むためです。
治療の前に、自宅でできるケアがある
その意味で、EBINEシリーズを開発できたことは、私にとって大きな財産でした。治療の前に、まず自宅でできるケアがある。
自分の身体と向き合う方法がある。
それをお伝えできるようになったからです。
もし性交痛で悩んでいるなら、まずはホームケアから始めてみませんか。
そして、自分がどこに痛みを感じているのかを知ってみてください。
痛みには必ず理由があります。
その理由を一緒に見つけていくことが、私たち医療者の役割だと思っています。
若い女性たちが、自分らしく生きられるように
若い女性たちが、もっと幸せに、もっと自分らしく生きられるように。私はこれからも、そのサポーターであり続けたいと思います。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。



