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更年期障害

「手・指の不調」メノポハンドとは?更年期の手の痛み・こわばり・しびれの原因、治療、予防法を婦人科女医が解説!

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メノポハンドとは?更年期に急増する「手の不調」

40代〜50代になり、

「なんとなく手がこわばって動かしにくい」

「スマホが持ちにくい」など、

手に関する不調を感じるようになってきた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

その不調は「メノポハンド」かもしれません。

 

女性ホルモンの低下により手の不調を感じているものの、まだ画像などでは所見が分からないような、手の疾患の初期のことを指します。

2025年2月にテレビで紹介されたことで、ぐっと知名度が高まりました。

今までは「気のせい」「年齢のせい」などと我慢するしかなかった病態も、メノポハンドと名前がついたことで、積極的に治療をおこなう対象としてみられるようになってきたと感じます。

 

今回は、女性特有の不調であるメノポハンドについて詳しく解説するとともに、婦人科でできるメノポハンドのケアをご紹介いたします。

 

なぜ更年期に「手の不調」が起こるのか?

手指の不調

メノポハンドというのは、2022年に日本手外科学会が名付けた概念で、まだ新しい考え方といえます。

「menopausal hand(メノポーザルハンド:更年期の手)」を略した言葉で、更年期の女性に生じるさまざまな手の不調を総称したものです。メノポハンドが病名というわけではありません。

まだ画像(レントゲンやMRIなどの検査では、まだ異常が映らない状態のこと)では所見が見つからないけれども症状が出ている初期の段階で、病態が進行していけば何らかの病名がつく可能性があります。

ではなぜ、「更年期の」手の不調がクローズアップされるようになったのでしょうか。

それは、手の不調の原因を突き詰めていくと、女性ホルモン、とりわけエストロゲンの分泌量の低下が関わっているとわかってきたためです。

エストロゲン(女性ホルモン)の分泌量の低下

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更年期には、自然な変化として、エストロゲンの分泌量が徐々に低下していきます。エストロゲンが体内で作用する際には、スイッチとなる「受容体」との結合が必要です。

受容体にはα(子宮・卵巣・乳腺に存在)β(骨・血管・関節などに存在)があり、それぞれの受容体にエストロゲンが結合することで女性の健康が守られています。

しかし、エストロゲンの分泌が減少すると、α受容体だけでなくβ受容体への結合も少なくなっていきます。

それにより、腱や腱鞘を包んでいる滑膜に浮腫が生じ、滑膜炎となったり、手根管内で正中神経を圧迫したりして、痛みに繋がります。また、関節に慢性的に負担がかかるようになることで、関節軟骨がすり減り、関節包が腫れることも、関節の痛みや変形の原因です。

このように、エストロゲンによるβ受容体への刺激が少なくなることで、関節包や滑膜、靭帯、軟骨といったさまざまな組織に影響し、メノポハンドの症状が出てくるのだと思われます。また、エストロゲンが持つ抗炎症作用が失われることも、メノポハンドを助長しているのでしょう。

エストロゲンの低下と手の不調とが結びついたことで、これまで「気のせい」「考えすぎ」などと、更年期女性の不定愁訴のように捉えられていた不調に対して、しっかりと対応ができるようになってきました。

 

【症状チェック】あなたもメノポハンドかも?こんな症状に注意

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メノポハンドは、手の不調の総称であり、「メノポハンド=◯◯病」と直結するものではありません。しかし、初期の段階では似たような症状が出ることも多いです。

まずは、メノポハンドのチェックをしてみましょう。

・朝に手がこわばる

・指の曲げ伸ばしがしにくい

・細かい作業がしにくい

・物を持つと手に痛みが出る

・手が痺れることがある

・関節の痛みがある

当てはまる項目が1つでもある方は、メノポハンドの可能性が考えられます。ぜひ、医療機関で相談してみてください。

 

メノポハンドで起こる代表的な疾患一覧

メノポハンドの原因となりうる疾患について、いくつか具体例をご紹介いたします。

1.腱・腱鞘の病気

エストロゲンの減少により、腱や腱鞘がダメージを受けやすい状態となるため、次のような疾患になりやすいです。

治療としては、安静、鎮痛剤の使用、ステロイドの注射、手術などの選択肢があります。

・腱鞘炎(ドケルバン病)

腱鞘炎(ドケルバン病)

親指の動きに関連する2つの腱と、それを包んでいる腱鞘とが擦れて炎症を起こし、腫れた状態です。

親指側の手首に、強い痛みを感じます。産後と更年期の女性に非常に多い疾患です。

・ばね指(弾発指)

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指の曲げ伸ばしに違和感を覚えたり、弾けるように指が伸びたりする状態です。

指の腱鞘炎であり、悪化すると指が動かなくなってしまいます。

2.関節の変形性疾患

指の関節液が減少することで関節の軟骨がすり減り変形し、疼痛を生じます。

エストロゲンの減少や、それに伴う骨粗鬆症が要因と考えられております。

安静、テーピングのほか、ステロイドの注射も選択肢です。

へバーデン結節ブシャール結節

・へバーデン結節

第一関節(DIP関節)の変形により、腫れや痛みを感じたり、曲がってしまったりする疾患です。

痛みのせいで、強くものを握ることができなくなるなど、日常生活に支障が出てしまいます。

ひどく悪化したケースでは、関節固定術・関節形成術をおこなう場合もあります。

・ブシャール結節

第二関節(PIP関節)の変形により生じる疾患で、へバーデン結節と似ています。

稀ですが、関節に水が溜まるケースもみられます。

・母指CM関節症

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CM関節は、母指(親指)の付け根の関節です。

物をつまむときや瓶のふたを開けるときなど、母指に力を入れるような動作で痛みが出ます。進行すると母指が動きにくくなり、関節の変形が目で見てわかるようになります。

ポイント
いずれの疾患も、エストロゲンジェルの塗布が有効なケースを多数、経験しております。

3.神経の障害

エストロゲンの減少によって靭帯や腱が炎症を起こしてむくみ、神経を圧迫して症状が出るということも多いです。

また、エストロゲンには抗酸化作用などにより神経を保護する役割もあるため、エストロゲンの減少で神経症状を感じやすくなるという側面も考えられます。

・手根管症候群

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手首や手の甲に加え、親指・人差し指・中指に痛みやしびれを感じるのが特徴です。更年期だけでなく、出産後の女性にも比較的多く見られます。ホルモンバランスの乱れから腱鞘がむくみ、正中神経を圧迫するためではないかと考えられています。

手根管症候群の場合、安静にすることが大切です。悪化する場合、薬物療法や手根管内のステロイド注射などの治療法があります。

・肘部管症候群

肘部管症候群

手根管症候群とも似ていますが、症状の出る部位が小指・薬指である点が大きく異なります。肘の内側にある尺骨神経が圧迫されることなどが原因です。肘をあまり動かさないよう、安静にすることが第一の治療となります。

4.骨粗鬆症による疾患

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更年期の女性で気をつけたいものの1つが、骨粗鬆症です。

女性ホルモン分泌の急激な低下に伴い、骨密度の低下も生じます。

そのため、閉経後に骨粗鬆症を発症する女性は非常に多いです。

気が付かない間に骨粗鬆症の進行がみられ、わずかな衝撃で手首を骨折(橈骨遠位端骨折)し、痛みが出ているという可能性も考えられるでしょう。

骨粗鬆症骨折の好発部位

肘部管症候群
手首の強い痛み、急激な腫れ、手がブラブラして力が入らない…

というような症状がある場合は、骨折も考えて検査する必要があります。

5.関節リウマチの初期症状

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関節の痛みやこわばりなどの症状があれば、しっかり調べておきたいのは関節リウマチです。

女性に多く、40代ごろから発症が増えてきます。

関節リウマチは、関節を破壊しながら悪化していく進行性の疾患のため、早期発見・治療開始がとても重要です。

関節リウマチの症状

以下の症状に当てはまると感じたら、早めに医療機関で相談しましょう。

・夕方よりも朝の方が症状は強い

・1時間以上続く強いこわばり

・関節の腫れ、熱感

・左右対称性の痛み

・細かな作業が難しい(ボタンをつける、靴紐を結ぶなど)

 

当院でも、メノポハンドと関節リウマチの鑑別のため、血液検査(女性ホルモン、リウマトイド因子、抗CCP抗体、炎症反応など)を実施することが可能です。

必要があれば、専門医へご紹介いたします。

 

自宅でできる予防・対策法【手軽に始められるケア】

手指ストレッチ・マッサージ

ストレッチ・マッサージをおこない、手指の血行を改善したり、筋肉の緊張を和らげたりすることで、症状が軽減する場合があります。痛みのある場合は無理をせず、つらくない範囲でおこなってみましょう。

お風呂上りなどにお試しください。

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手指ストレッチ例

・手を「グー・パー」と開いたり閉じたりをゆっくり繰り返す

・片手を前に伸ばして手首を立て、反対側の手で指をうしろに伸ばす

・両手の指先を合わせた状態で、両方の親指をぐるぐると回す

 

大豆製品(イソフラボン)やサプリメントの摂取

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大豆には、エストロゲンと似たような働きをする成分が含まれている、と聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。

大豆に含まれる大豆イソフラボンは、体内でエクオールへと変化し、このエクオールがエストロゲンに似た構造をしているのです。ですから、大豆やエクオールのサプリメントを摂取することで、更年期にまつわる症状が緩和されたと感じる方もいます。

薬ではないため、即効性や万人への効果が期待できるわけではありませんが、試してみてもよいでしょう。

サポーターを使う

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メノポハンドに関連するほとんどの疾患で、患部の安静が大切です。痛みのある部位をあまり動かさないように意識しましょう。

そうは言っても、生活をしていると無意識に動かしてしまうことも多いです。市販のサポーターを使って、動かないように固定してみてください。

医療機関で、一人ひとりに合わせたサポーターを作成できる場合もあります。市販のサポーターのサイズが合わない、うまく装着できない方は、整形外科などで相談してみるのもよいと思います。

温熱グッズの活用

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温めると楽になるという場合は、温熱グッズもおすすめです。

たとえば、手首の痛みがある場合、手首用のカイロが使い勝手がよいのではないでしょうか。手袋をする、湯船で手を温めながらマッサージをするなども、症状緩和によいと思われます。

運動や睡眠に気を配る

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手の不調だけでなく、更年期にまつわるさまざまな症状への対策として、適度な運動や、十分な睡眠が大切です。

また、肩や首を回す体操は効果的です。毎日、朝昼晩10回ずつから試してみてはいかがでしょうか。

運動については、痛みのない範囲で、手を酷使しないものがよいでしょう。

ウォーキング、ヨガ、スイミングなど、好みのものを取り入れてみてください。

運動により自律神経が整いやすくなり、ホットフラッシュなどの自律神経症状の緩和にも繋がります。

血行がよくなり、メノポハンドにもよい効果が期待できます。

 

どの診療科に相談すべき?整形外科?婦人科?

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関節の症状であれば、まず整形外科を考える方が多いだろうと思います。

整形外科でレントゲンなどの検査をおこなっても、メノポハンドであれば、まだ所見が見つからないかもしれません。
とく関節や骨には原因がなく、痛み止めを使うか我慢するかしかない…となった場合には、婦人科という選択肢を思い出してみてください。

リウマチなどの疾患の可能性を除外した上で、メノポハンドが疑わしいと判断した場合には、ホルモン補充療法も選択肢となるでしょう。

 

当院でできること・更年期のサポート体制

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海老根ウィメンズクリニックでは、女性の人生のトータルケアに全力を注いでおります。

もちろん、更年期に生じるさまざまな不調への対応も可能です。

血液検査、骨密度チェック、必要に応じ画像検査(レントゲン、MRI等)など、十分な検査をおこなった上で、ホルモン補充療法を含め最適な治療法をご提案いたします。

ホルモン補充療法はいくつかの方法がありますが、とくに手の痛みに対しては、エストロゲンジェルを関節に直接塗布するという方法が有効なケースを多く経験しております。

更年期障害に対しては、ホルモン補充療法のほか、漢方薬、プラセンタ療法など多くの方法でアプローチ可能です。

手の不調がある場合の診察の流れ

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手の不調で受診された場合の診察の流れをお伝えします。

・問診

いつから、どのような症状かなど詳しくお伺いします。

イライラ、火照りなどの更年期症状があるか、月経の状況なども合わせてお尋ねする場合もあります。

・検査

血液検査やレントゲンなど、必要な検査をおこないます。

骨粗鬆症が疑われる場合は、骨密度検査(DEXA法)をおこないます。

ホルモン補充療法の前には、子宮がん検診や乳がん検診も必要です。

・診察

関節の状態を直接確認します。症状についてさらに詳しくお伺いします。

・治療のご提案

当院でおこなえる治療について、一人ひとりに合うものをご提案いたします。

検査結果がすぐに出ない場合、治療のご案内は次回以降となりますのでご了承ください。

関節リウマチが疑わしいなど、専門的な治療が必要だと判断した場合には、速やかに専門医へご紹介いたします。

お一人で我慢せず、まずは気軽にご相談にいらしてください。

 

よくあるご質問(Q&A)

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更年期のメノポハンドについて、よくあるご質問にお答えいたします。

Q. メノポハンドは、治療しなくても自然と治りますか?

メノポハンドは、先ほどご紹介したようなさまざまな疾患へと進行してしまう可能性あります。女性ホルモンの分泌低下が主な原因ですので、何もせずによくなっていくということは考えにくいでしょう。

Q. 更年期でなくても、メノポハンドと同じような症状が出ることはありますか?

今回ご紹介したような疾患のいくつか(腱鞘炎、手根管症候群など)は、産後にも生じやすいものです。産後も、妊娠中に女性ホルモン分泌が高まっていたところから、急激に分泌量が低下するため、更年期と似たような状態となります。

もちろん、女性ホルモン分泌の低下だけがこれらの疾患の原因ではありませんので、手先をよく使う仕事をされている方などは、同じような症状が出ることもあるでしょう。

Q. 家庭でのケアで治る可能性は?

関節や腱の痛みの場合、安静にすることや、テーピング、温めるなどの対処で症状が和らいでいくことはあります。ですが、病気の進行を抑えたり、治したりするような効果までは期待できません。

まず家庭でのケアを試してみて、十分によくならない場合は、医療機関でご相談ください。

 

まとめ|手の不調に気づいたら早めの対応を

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女性ホルモンの分泌低下による手の不調は、「メノポハンド」と総称され、近年注目されている病態です。

悪化すると手指の動きが制限され、状況により変形したり力が入りにくくなったり、日常生活がつらくなってしまう方もいらっしゃいます。早めの対処で、悪化の予防を目指していくことが大切です。

メノポハンドには、エストロゲンジェルの塗布など、ホルモン補充療法が効果的なケースも多いです。

整形外科で対応が難しいとなった場合、婦人科でもご相談をお受けできるかもしれません。

「気のせい」「年齢のせい」と我慢せず、まずはお気軽に、ご相談へいらしてください。

医師と相談しながら、無理なく、楽に過ごせるようにしていきましょう。

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院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。

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