子宮頸がんワクチンの重要性とその効果【25年の医療現場から思うこと】
更新日:2024.08.10
25年前、私が研修医だった頃には、子宮頸がんワクチンは存在しませんでした。
子宮頸がんや子宮体がんがどのように発生するのか、正確には解明されていなかったのです。入院患者の治療を行う中で、以下のような共通点が見られました。
子宮体がんの患者さん
多くの妊娠経験があり、子供が多い。または、出産したことがない。
子宮頸がんの患者さん
多くの妊娠経験があるが、子供が少ない。子宮頸がんはウイルス感染症なのではと、産婦人科医なら薄っすら気になっていたかと思います。
子宮頸がんワクチンの登場
それから10年ほどで、子宮頸がんがHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスが原因でがんになることが明らかになりました。特に、HPV16型と18型で進行が早いことが分かり、ワクチンで子宮頸がんを予防できることが判明しました。世界で初めてがんを予防できるワクチンが登場したのです。一番初めは、HPV16型、18型の2価ワクチン、その後4価ワクチン、今では9価ワクチンも登場し、公費で接種できるようになりました。
初期の期待と普及
当時、日本では子宮頸がんワクチンがまだ入手困難でした。
20代の女性の子宮頸がん治療に携わる中で、以下のような治療方法がありました。
・前がん状態および浸潤癌でない場合
円錐切除術や子宮頚部の焼灼術で子宮を温存可能。
・浸潤癌の場合
放射線療法や子宮全摘術が必要で、その後の妊娠は望めない。命を救いながらも、女性の夢を救えない無力さを感じることがありました。
子宮頸がんワクチンの普及と効果
約15年前から子宮頸がんワクチンが普及し始めました。以下のようなワクチンが接種可能です。
サーバリックス(2価ワクチン)
HPV16型、18型を予防。
ガーダシル(4価ワクチン)
HPV16型、18型に加え、性病のイボであるコンジローマの原因ウイルスであるHPV6型、11型も予防。
シルガード(9価ワクチン)
幅広いHPVタイプに対する免疫を獲得。私と息子もガーダシルを接種し、病気を予防できる時代が早く来ることを願っています。
子宮頸がんワクチン副作用の報道と現状
ワクチン普及後、マスコミで子宮頸がんワクチンの副作用が取り上げられましたが、その事実を確認することはできませんでした。それでも、産婦人科医として子宮頸がんワクチンの重要性を感じ続けていました。
まとめ
子宮頸がんワクチンは、HPV感染による子宮頸がんを予防するための重要なツールです。毎年の子宮頸がん検診はもちろんのこと、ワクチンの普及が進むことで、多くの女性が将来的に子宮頸がんから守られることを願っています。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。