夫のちんぽがはいらない「処女膜強靭症」?性交痛の原因・症状・セルフチェック・治療法・費用まで女医が解説!
更新日:2025.08.28

最近、「夫のちんぽがはいらない」という本を読みました。
かなり話題になった作品で、知り合いから勧められて手に取ったのですが、最後まで読み進める中で「婦人科医として、この状況をどう考えればよいのだろう?」と考えさせられました。
作中に登場するご夫婦が子どもを授かれずに苦しむ姿に胸が痛むと同時に、そこに寄り添い、解決の糸口を一緒に探すはずの「医師の存在」が描かれていないことに、少し悲しさを覚えました。
もし相談を受ける機会があれば、医学的なアプローチで力になれたのではないかと感じたのです。
実際、
「性交がうまくいかない」
「パートナーのペニスが入らない」
「性交のたびに激しい痛みがある」
といった悩みを抱えるカップルは少なくありません。
しかし、その多くが
「恥ずかしい」
「どこに相談すればいいかわからない」
と感じ、医療機関を訪れるまでに大きなハードルを感じています。
婦人科医としては、この問題は決して特別なことではなく、診察や治療で解決できるケースが多くあります。
この記事では、性交ができない原因の一つである 「処女膜強靭症」 に焦点を当て、症状・セルフチェック・治療法について解説します。
また、他に考えられる原因や解決の選択肢についても整理し、読んでくださった方が一歩を踏み出すための道しるべとなることを目指しています。
目次
処女膜強靭症(しょじょまくきょうじんしょう)とは?
処女膜について正しく理解している人は少なくありません。
処女膜とは、腟口の近くにある厚さ1ミリ程度のひだ状の膜で、思春期以降は月経血の通り道となる小さな穴が開いています。
処女膜強靭症(しょじょまくきょうじんしょう、英語: rigid hymen / hymenal stenosis) とは、
この処女膜が生まれつき通常よりも厚く・硬く・伸縮性に乏しいために、性交時にペニスの挿入が物理的に困難になる状態を指します。
▼女性器の正面図

▼膣部(処女膜と膣口)の正面図

多くの場合、日常生活では全く自覚症状がなく、初めての性交渉の際に
- 「ペニスが挿入できない」
- 「挿入時に裂けるような痛みや出血がある」
といった症状で気づかれることが多いです。
ただし、処女膜が硬すぎて性交が全くできないケースは稀であり、診察をしてみると「膣口の位置が分かりにくい」「膣口が少し狭い」「骨盤底筋群が強く収縮している」といった、他の要因が重なっている場合もあります。
主な症状
処女膜強靭症の主な症状は、物理的な挿入障害によるものです。
- ペニスの挿入が全くできない、または途中で止まる
- 挿入を試みる際の裂けるような激しい痛み(性交痛)
- 性交を試みた後の出血
「もしかして処女膜強靭症?」自分でできるチェック方法とその限界

・指やタンポンは判断基準になる?
「指は1本なら入るけど、2本は痛い」
「タンポンは使える」
といった声はよく聞かれます。
しかし、これらは処女膜強靭症を否定する決定的な証拠にはなりません。
なぜなら、処女膜の形状や伸縮性、穴の大きさは個人差が非常に大きく、細い指やタンポンは挿入できても、それ以上の大きさのペニスは受け入れられない、というケースは珍しくないからです。
・見た目でのセルフチェックは可能?
ご自身で鏡を使って見ても、正常な処女膜との違いを判断することは医学知識がない限り非常に困難です。
医療機関ではプライバシーに配慮した上で、イラストや模型を用いて分かりやすく説明します。
・セルフチェックの限界とリスク
最もお伝えしたいのは、安易な自己判断にはリスクが伴うということです。
無理なセルフチェックは痛みや出血を招くだけでなく、「やっぱりダメだった」という経験が、二次的に 「膣痙攣」(心理的な要因で膣が収縮してしまう状態)を引き起こす可能性もあります。
最も確実で安全な確認方法は、専門医による診察です。
Check Point
「自分もそうかも?」
と思ったら、無理にセルフチェックをせず、まずは専門医にご相談ください。
類似する症状や疾患との違い(鑑別が大切)

「挿入できない、痛い」というお悩みは、処女膜強靭症以外にも様々な原因が考えられます。
1.入り口が痛む(挿入時の痛み)
・膣痙攣(ちつけいれん)
性交への恐怖心から、膣の筋肉が無意識に強く硬直してしまう状態。
・外陰・膣の炎症(感染症)
カンジダや性器ヘルペスなどの感染症で、接触時に強い痛みや灼熱感が生じます。
・外陰前庭炎(がいいんぜんていえん)
膣の入り口の「前庭」に原因不明の炎症が起き、触れるだけで激痛が走る疾患です。
2.奥の方が痛む(挿入後の深い痛み)
・子宮内膜症
性交時に子宮の奥にある病巣が刺激されて痛む、深い性交痛の代表的な原因。
・子宮腺筋症、子宮筋腫
子宮が腫れていたり、筋腫の場所によっては性交時の圧迫で痛みが出ます。
Check Point
ここで挙げたのは代表例です。
性交痛の原因全般については、当院の解説ページでさらに詳しくご説明しています。
処女膜強靭症の治療法と「費用」

費用と健康保険の適用について
項目 | 処女膜閉鎖症 | 処女膜強靭症 |
---|---|---|
状態 | 完全に閉じている | 硬いが穴は開いている |
主な症状 | 月経が来ない、下腹部痛 | 性交ができない、強い痛み |
健康保険 | 適用される | 原則、適用されない |
処女膜強靭症は、処女膜に開口部はあるものの、硬く伸縮性がない状態です。
月経血の排出は可能なため、保険制度上は生命や健康に直接的な危険を及ぼす「疾患」とは見なされにくく、性機能や生活の質(QOL)に関わる問題として扱われる傾向があります。
このため、大学病院や総合病院を受診すれば、保険診療で治療ができる場合もあります。自由診療での対応となる場合、手術費用は全額自己負担となり、10〜30万円以上となる可能性があります。
・処女膜閉鎖症とは?
一方で、処女膜閉鎖症は、処女膜が完全に閉鎖しており、月経血が体外に排出されない状態を指します。
これは身体機能に明確な障害をもたらす「疾患」と見なされるため、治療には健康保険が適用されます。
治療法について
処女膜切開術
局所麻酔を用いた10〜15分程度の日帰り手術。もっとも一般的で効果的な方法です。
診察では、まずカウンセリングで詳しくお話を伺い、内診で状態を確認したうえで、治療方針と総額費用をご説明します。
痛みや費用について不安がある方も多いですが、できる限り分かりやすく丁寧にご案内いたしますのでご安心ください。
症例紹介
長年のコンプレックスから解放されたAさんの声
20代女性・Aさんのケース
性交が一度も成功せず自分の何かがおかしいのかと責め続けておりました。原因もはっきりわからず、大学病院を受診しました。診察で処女膜強靭症ということがわかり、原因がわかってちょっと不安感は軽減しました。
また、担当した医師が、積極的に治療を行うことを提案してくださり、手術を決意しました。入院での手術となりましたが、術後、少しの出血は1週間ぐらいで治まり、疼痛も数日で解消されました。
術後初めて痛みなく最後まで性交ができた時、身体的な痛みから解放されただけでなく 『自分は欠陥品じゃなかったんだ』 と、心の重荷がすっと消えていくのを感じました。
補足事項
-
治療を受けられた方の一例であり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。
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処女膜切開術では、術後に出血や痛みを伴う場合があります。まれに感染や瘢痕化などのリスクもあります。
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治療の効果や経過には個人差があり、治療法は必ず医師との相談のうえで決定されます。