クリトリス(陰核) が痛い・痒い・腫れる・できもの… 症状別の原因と正しいケア・受診目安を女性医師が解説
更新日:2025.08.22

クリトリスの痛みやかゆみ、違和感に悩んでいる方は、決して少なくありません。
しかし、デリケートゾーンの構造や症状の原因は自分ではよく見えないことや、相談するのが恥ずかしいと感じ、症状を我慢している方も多い印象です。
クリトリスをはじめとしたデリケートゾーンの症状は、ぜひ婦人科でご相談ください。
本記事では、クリトリスの位置や構造、性機能における役割を解説するとともに、痛みやかゆみ、付着物、乾燥や産後の違和感など、よくあるお悩みについて、原因や日常でできるケアを解説いたします。
症状に悩む方が安心して対処できるよう、海外の文献情報とこれまでの私の経験を交えて、お伝えしたいと思います。
目次
クリトリスとは?位置・構造・役割
女性器は、自分の目で直接見ることができない部位にあるため、女性でもどのようになっているのか、何がどこにあるのか、よくわからないという方は多いです。
クリトリスのお悩みについてご紹介する前に、クリトリスについて解説します。
・クリトリスの位置

・クリトリスの構造

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陰核(クリトリス):性的快感を感じる神経が集中する部位。
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陰核亀頭:陰核の先端部分で、包皮に覆われていることが多い。
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陰核包皮:陰核亀頭を覆い、保護する皮膚のひだ。
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小陰唇:膣口や尿道口を囲む柔らかい皮膚。
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海綿体:陰核を構成する組織で、血流により膨張する。
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尿道口:尿が排出される出口。
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前庭球:膣口の両側にある海綿体組織で、性的刺激により膨張する。
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膣口:膣の入口。性交や出産の通り道となる。
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バルトリン腺(大前庭腺):膣口の両側にある腺で、潤滑液を分泌する。
・クリトリスについて
クリトリスは、尿道口よりも体の前側、大陰唇の付け根にある小さな突起のことと思われがちですが、実際にはもう少し広い範囲のことを指します。
外から見える、多くの方がクリトリスと呼んでいる小さな突起部分は「陰核亀頭」です。
名前の通り、男性のペニスと同じように性的感覚を感じる部位で、神経や血管が豊富に存在します。
体内では、陰核亀頭から陰核海綿体・前庭球が腟口の周りを取り囲むように存在し、非常に多くの神経が張り巡らされています。
ヒダ(大陰唇・小陰唇)のあたりを触ると気持ちがよいと感じるのも、クリトリスや神経があるから。構造を知ると、納得いただけるのではないでしょうか。
・性機能における役割

クリトリスには、非常にたくさんの知覚神経があり、敏感な臓器です。
性的な刺激を受けると血流が増え、前庭球がふっくらと膨らみ、腟口の周囲を狭くすることで、性行為時の摩擦が強まり、性的な快感を感じやすくしてくれるのではないか、と考えられています。
また、クリトリスへの刺激を受けると、アイ液の分泌も増えます。痛みなく、スムーズに男性器を受け入れるためにも重要な臓器です。
クリトリスの痛みに関する悩み
クリトリスに関するお悩みで最も多いのは「痛み」です。

痛みの原因ランキング
クリトリスの痛みに関しては、排尿後にペーパーで拭いたとき、性行為のとき、何もしていないときにも下着が触れて痛いなど、痛みのタイミングや程度によってある程度原因に見当をつけることができます。
クリトリスの痛みは、原因によって症状や対処法が異なりますので、原因をしっかり突き止めることが大切。
当院での経験や、海外からの報告を合わせると、以下のような原因が多いと思われます。
第1位:摩擦や刺激による皮膚炎・擦過傷(摩擦性皮膚炎)
ランニングやサイクリングや乗馬など、デリケートゾーンに繰り返し摩擦が加わるような動作を日常的におこなっている場合に、擦れや刺激でクリトリスに炎症を起こすケースが多いです。
炎症を起こしてしまうと、何もしていないときにもヒリヒリ・ムズムズと感じるようになります。
下着やナプキンの縁、衣類の縫い目がクリトリスにあたって、刺激になっているという方もおられます。下着は、内側に縫い目のないシームレスの商品も売られていますので、試してみてください。
ランニングや下着など、原因になっているものを除いて安静にすること、保湿することで改善していきます。
第2位:真菌・細菌による炎症
腟カンジダ症や細菌性腟症などで炎症を起こし、かゆみ・痛み・ヒリヒリ感などを伴っているケースです。
クリトリスもこれらの菌が原因で炎症起こすことがあります。おりものの量や色、匂いの変化を伴うことが多く、人によっては何度も繰り返してしまいます。腟カンジダ症や細菌性腟症で受診される方は、非常に多いです。
まずは婦人科でしっかり治療をすること。
そして、再発させないための対策が重要です。
疲労を溜めないように生活を見直す、下着の素材をコットンなど通気性のよいものにする、おりものシートをやめるなど、試してみてください。
腟炎については、以下の記事 で詳しくお伝えしています。
第3位:クリトリス包茎による陰核痛
包茎と聞くと、男性器に特有のお悩みというイメージをお持ちの方がほとんどだと思います。
女性のクリトリスにも包皮が覆い被さっており、多くの方は性的興奮に伴って包皮が剥ける状態(仮性クリトリス包茎)です。
しかし、包皮を向くことができない真性クリトリス包茎の方も一定数いらっしゃいます。何もしていないときにはさほど症状がなくても、性行為にトラブルを抱える傾向にあります。
クリトリス包茎に関する研究は、あまり歴史が長くありません。
2018年にアメリカの性医学専門クリニックが614名の女性を分析した結果、23%の女性にクリトリス包茎があり、そのうち約14%がクリトリスの痛みを訴えていました。クリトリス包茎の場合、恥垢が溜まり炎症を起こしやすいのが原因です。
また、包皮があることで性的な刺激を感じにくく、濡れない・オーガズムを感じにくいこともわかっています。
性交時痛のある方、腟カンジダ症や尿路感染症を繰り返しやすい方、硬化性苔癬(こうかせいたいせん)の持病をお持ちの方は、クリトリス包茎の可能性が高いです。
ご自身ではなかなか見えにくい部位ですので、婦人科でご相談いただければと思います。
クリトリス包茎についてはあまり知られていませんが、ケアの工夫や、場合によっては手術で、痛みなどのお悩みを改善可能です。
第4位:性器ヘルペスなどの性感染症
性器ヘルペスは、水疱・潰瘍がいくつもでき、非常に強い痛みが特徴的な性感染症です。
症状の出る範囲が広く、クリトリスの周囲にまで及ぶこともあります。
性器ヘルペスについては、以下の記事 で詳しく解説しておりますので、参考にしてください。
歩けないほどの激痛がある場合は、性器ヘルペスの可能性が非常に高いですので、お早めに医療機関を受診してください。
第5位:外傷(分娩・スポーツ・事故)
出産時の尿道損傷やその周囲の損傷により、クリトリスの周囲に痛みが残ってしまうケースが時々みられます。
感覚の麻痺や恥骨の痛みを訴える方も少なくありません。
また、スポーツや事故などで股の周辺に怪我を負ったのをきっかけとして、神経過敏、瘢痕から慢性痛に移行してしまう場合もあります。
かゆみ・ヒリヒリ・ムズムズ感

かゆみ・ヒリヒリ・ムズムズ感は、乾燥・かぶれ・感染が主な原因です。
保湿剤やかゆみ止めの使用、感染の場合は治療をおこなうことで、改善が見込めます。
暑い時期や月経中などは、下着の中が蒸れやすく、クリトリスや外陰部のかゆみを生じやすいです。皮脂や汗、アイ液などが混ざり合ってできる「恥垢」も、夏には増えやすくなっています。
デリケートゾーン用のソープで丁寧に洗いましょう。
とくにクリトリス包茎の方は、少し皮を剥いて汚れを落とすことが重要です。強く擦りすぎると炎症を起こしてしまいますので、優しく洗ってください。
白いカス・白い粒・塊がある

クリトリスに白いカス状のものが付着していたり、デキモノ・塊のようなものができる場合があります。
クリトリス包茎と関連の深い症状です。
海外からの報告も参考にしながら、お伝えいたします。
【参考】
Jill Krapf et al. Approach to Diagnosis and Management of Clitorodynia.
白いカスの正体と構成成分
クリトリスなど、女性のデリケートゾーンに付着している白いカスは、皮脂や汗、アイ液などが混ざり合ってできる「恥垢」です。
誰にでも一定量の恥垢が生じていますが、とくにクリトリス包茎の方は、包皮の隙間に恥垢が溜まってしまいます。
溜まると、デリケートゾーンの悪臭の原因となったり、感染を起こして痛みやかゆみにつながったりするため、日頃から丁寧に洗い流しておくことが大切です。クリトリスは敏感な臓器ですので、優しく、泡でなでるように洗いましょう。
クリトリス包茎により恥垢が溜まっていると、恥垢による感染のため膿瘍形成されることがあります。粉瘤や嚢胞になる場合があるとも報告があります。
ケラチンパール
クリトリスの皮膚の内側に、白いデキモノのようなものが見える場合があります。
ケラチンパールと呼ばれる、角質が皮下に溜まったものかもしれません。
全女性の37%にみられ、とくにクリトリス包茎の方に多いものです。
ケラチンパールのある方は、約90%で強い痛みを感じると報告されております。
ケラチンパールの切除、クリトリス包茎を解除するための包皮切除術などが必要になるでしょう。
当院でできる角質ケア「ハイドラクールプラス」

当院では、角質ケアの施術としてハイドラクールプラスをご用意しております。
2種のピーリング水溶液を用いたジェット水流で肌表面の汚れや毛穴の皮脂詰まりを除去した後、高周波で血流やコラーゲン生成を促すことで、肌のツヤやハリ感を向上させます。
デリケートゾーンだけでなく、お顔にも実施可能な施術です。
産後の違和感・痛み

産後は、女性ホルモンの分泌が急激に減った状態となります。
そのため、ホルモンバランスの変化により、乾燥や、デリケートゾーンの萎縮により、痛みや違和感が出やすい時期です。
分娩時の損傷や会陰切開の傷が回復するまでにも、ある程度時間がかかります。傷が引きつれたように感じる、神経の麻痺が残ってしまう、産後に濡れにくくなったというケースも、珍しくはありません。
当院では、産後の腟やデリケートゾーンの回復の助けのために、モナリザタッチの施術が可能です。
レーザーで細胞を刺激することで、コラーゲン線維の増殖を促し、デリケートゾーンの乾燥・かゆみといった症状を和らげていきます。
デリケートゾーンの乾燥

デリケートゾーンの乾燥により、クリトリスをはじめとした女性器の痛みや違和感につながっているケースについてお伝えします。
加齢・閉経・低エストロゲン状態による変化
女性は、40代ごろから少しずつエストロゲンの分泌量が減少し、そして閉経の前後で急激に分泌量が低下します。エストロゲンにはコラーゲンの生成を促す働きもあるため、エストロゲンの減少に伴って皮膚や粘膜のハリ・潤いが減少するのは自然なことです。
粘膜の乾燥により、デリケートゾーンのひりつき、突っ張り感、かゆみ、性交時痛、頻尿、尿もれなど、さまざまな症状があらわれます。最近になって、閉経関連尿路生殖器症候群(GSM)という概念もできました。
毎日の保湿剤の使用、性行為時は潤滑剤の使用がおすすめです。
エストロゲンの腟錠や、モナリザタッチの施術などがよい場合もありますので、ご相談ください。
医師が推奨する保湿ケア
デリケートゾーンの保湿は、低刺激のもの、添加物などの少ないものがよいと思います。腕などと比較して、デリケートゾーンの皮膚は吸収率が非常によいためです。
当院では、院長の私が監修した「EBINEジェル」、「EBINEフェミニンセラム」をご用意しております。
ご興味のある方は、お気軽にお声がけください。
受診の目安と診療科の選び方

「デリケートゾーンにかゆみ・痛み・違和感がある」
「クリトリスが痛いような気がする」
そのようなとき、どこを受診すべきか悩んでしまう方も多いと思います。
婦人科・皮膚科の違い
デリケートゾーンにまつわるお悩みは、基本的に婦人科でお受けできます。
クリトリスや腟の構造・役割など、婦人科医ならではの視点で症状を診ること、内診台に乗っていただくことで症状のある部位をよく観察できることなど、婦人科を受診するメリットは多いです。
デリケートゾーン周囲の皮膚に水ぶくれや発疹がある場合は、皮膚科で対応できる症状(ヘルペスなど)もあると思われます。クリトリスや腟など、女性器に症状があるのであれば、やはりまずは婦人科に来ていただくのがベストでしょう。
当院にお越しいただいた方で、皮膚科など別の専門医に診てもらうべきと判断した場合には、紹介状をお出しします。
【症例】誰にも相談できなかった原因は「クリトリス包茎」

5年以上悩んだクリトリスの違和感
62歳の女性が、長年のお悩みを打ち明けてくださいました。
「5年くらい前から、クリトリスの周りの違和感がずっと頭から離れないんです。誰にも言えなくて…」 そう言って、勇気を出して来院されました。
診察させていただくと、クリトリスが薄い皮(包皮)に覆われた「クリトリス包茎」の状態でした。 この状態だと、どうしても皮の内側に垢や汚れが溜まりやすくなります。
その結果、細菌が繁殖して炎症を起こす「包皮炎」になっており、赤く腫れていました。
さらに、包皮の中には膿も溜まっており、これが長年の違和感の正体だったのです。
治療は、まず溜まっていた膿を外に出すための小さな処置(小切開による排膿)から始めました。 そして、炎症の原因となっていた汚れをきれいに取り除き、クリトリスを清潔に保てるように、皮がくっついてしまっている部分(癒着)を丁寧に剥がしました。
処置のあとは、消毒をして抗生物質の軟膏を塗り、飲み薬と塗り薬をお渡ししました。
患者様は、数日ですっかり綺麗に治りました。
半年後に軽い炎症で再診されましたが、その際はクリニックでの消毒だけで、すぐに改善しました。
私たち医師にとって感染症の処置は日常的な診療ですが、患者様にとっては、このお悩みを打ち明けるのに、どれほど勇気がいったことかと思います。今回の診察を通して、そのことを改めて痛感いたしました。
この経験から、当院では病気の治療だけでなく、トラブルを未然に防ぐための「外陰部クリーニング」を外来で行うことにいたしました。 ご自身では洗いきれない部分を専門的に洗浄し、清潔に保つお手伝いをします。
「これって病気なのかな?」
「ちょっと気になるだけなんだけど…」
そんな些細なことでも構いません。
どうぞ一人で悩まず、躊躇わずにご相談ください。
よくある質問(FAQ)

Q. 白い粒は病気ですか?
皮膚の内側に見える白い粒のようなものは、ケラチンパールだと思われます。それにより強い痛みが出る場合がありますので、切除も選択肢です。
Q. 産後の痛みはどれくらいで治まりますか?
産後、2週間〜2か月程度で、多くの場合は痛みがおさまっていきます。ですが、デリケートゾーンには非常に多くの神経が通っており、出産によるダメージで神経痛や麻痺が残ってしまう場合も時々みられます。
Q. 性行為のたびに痛いのはなぜ?
性交時痛の原因としては、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患がある、腟炎を起こしている、クリトリス包茎炎などが考えられます。
疾患の有無を確認し、原因にあった対策をすることが大切です。
まとめ|不安を放置せず、正しい知識とケアを
クリトリスの痛みやかゆみ・違和感は、摩擦や炎症、感染症、クリトリス包茎、加齢やホルモン変化など、さまざまな原因で生じます。
婦人科では、デリケートゾーンにまつわるお悩みをすべてご相談可能です。
恥ずかしいと感じるかもしれませんが、適切なケアをおこなえば症状は改善が見込めます。まずは、婦人科での受診で原因を特定しましょう。
当院では、保険診療・自費診療・ホームケアのいずれにも力を入れており、多様な アプローチで皆さまのお悩みに向き合うことができます。お気軽に、ご相談にいらしてください。
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「デリケートゾーンの不快感」
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。