デリケートゾーンの乾燥とその対策(治療法と予防法)について婦人科女医が丁寧に解説。
更新日:2025.04.23

デリケートゾーンの乾燥について、非常に困っている方がたくさんいらっしゃいます。
乾燥は病気でないと思われている方も多いようですが、つらい症状であることは事実ですので、できるだけ対応したいと思っております。
目次
外陰部と膣に分かれるデリケートゾーン

デリケートゾーンといわれる部分は主に外陰部と膣に分けられます。
外陰部の乾燥
年齢とともに、皮下組織が薄くなり、表皮も切れやすく乾燥してきます。
これは、身体全体と同じように年齢と共に徐々に皮膚の細胞の分裂速度が遅くなり、身体の内臓を包む細胞も脆弱になっていくためと思われます。
膣の乾燥
やはり膣壁の弾力性がなくなり、膣分泌液も低下して、乾燥感が出現します。
外陰部と膣の境目になる膣口の裂傷や疼痛も同時に出現することが多いようです。
乾燥しやすい形状の特徴

外陰部の構造と乾燥の関係
1.大陰唇が厚い場合
大陰唇の厚みがある場合は、小陰唇のサイズに関わらず膣口を覆うことができるため、乾燥感を訴える方は少ない印象です。大陰唇のふくらみが大きいということは、外陰部に血流も十分にあり、皮膚の再生能力もしっかりあると思われます。
2.大陰唇が薄く、小陰唇が十分な場合
大陰唇の厚みが少ない方でも、小陰唇がしっかりと膣口をカバーできていれば、乾燥の症状は強くないと思います。しかしながら、外陰部の血流障害が関与しているからなのか、大陰唇が薄い方は比較的小陰唇が小さい傾向にあると思われます。
3.大陰唇・小陰唇ともに小さい場合
膣口の保護が不十分となり、乾燥症状が出やすくなります。
小陰唇が大きく見える場合【小陰唇縮小術の前の注意点】
大陰唇が薄い方は、小陰唇が相対的に大きく見える場合があります。
このような方で、大陰唇の厚みが少ないため、相対的に小陰唇が大きすぎると勘違いをして、小陰唇縮小術を行いたいと相談にいらっしゃる患者様が多いです。
このような場合、小陰唇縮小術を行うと、膣口を保護するだけの十分な小陰唇を確保できなくなることがあり、膣の乾燥という合併症を伴うことがあります。切除した組織を元に戻すことは難しいため、まず、小陰唇が大きすぎるのでは?と悩まれる方は、産婦人科の専門医に相談することをお勧めします。
小陰唇が大きすぎて、下着に挟まっていたい!
何度も下着との刺激で膿瘍ができてしまう!
などは外科的治療が適している場合もあります。
デリケートゾーンの乾燥が起こりやすい状況

年齢による乾燥
年齢を経て更年期以降には、大陰唇や小陰唇は小さくなり膣も萎縮していき、乾燥の症状が出現します。
特に膣口を覆う小陰唇の下端の萎縮が進むため、性交痛のみならず日常生活も非常に苦痛になることがあります。下着やズボンが外陰部に当たると疼痛がひどく出現し、全く下着をつけることができずに外来にご相談にいらっしゃる患者様もいらっしゃいます。
その他の原因
1.ホルモンバランスの変化
100歳まで生きる可能性が大いにある現代社会において、外陰部や膣に関しても将来のことを考えた手術設計は非常に大切です。また、乳がんや子宮がんで、低エストロゲン状態が長い患者様に乾燥感が強く出現することが多いです。
2.20代、30代のデリケートゾーンの乾燥
一方、若年の方の乾燥感の患者様が増えております。
ほぼ全員といっていいくらい、大陰唇が薄く、小陰唇も膣口も小さいです。
成長しきっていない外陰部と膣といった印象を受けます。そして、とても多いのが、10代より低用量ピルを飲んでいる人がほとんど。
若年の方に、丁寧にデリケートゾーンの保湿剤の使用方法をお伝えすることに当初とても違和感があったのですが、保湿剤で乾燥感や性交痛が緩和されたと、とても喜んでくださる若い患者様にお会いすると嬉しくなるようになりました。
また、私の若い頃には友人の会話にも患者様からも受けることのなかった相談を受けるようになると、何か私の若い頃とは違う感じがします。
ともあれ、喜んでいただいているので、当院が開発した保湿剤「EBINEジェル」をおすすめしております。
3.過剰な洗浄
また、ウォッシュレットを頻回に使用する方に乾燥感を持つ方が多いです。ウォッシュレット使用後に保湿剤を使用することをお勧めしております。
デリケートゾーンの乾燥対策

1.適切な保湿
2.洗浄後のケア
3.膣内環境の整備
当院で開発した保湿剤「EBINEジェル」も、毎回トイレに持っていけるようにポーチに入るサイズの商品にいたしました。
また、ウォッシュレットを頻回に使用する方に、外陰部のにおいが気になっている患者様がいらっしゃいます。頻回に洗うことで、臭い対策されていると思いますが、可能であれば、洗うこと、保湿することに加えて、膣内の細菌性膣炎の有無を確認することをお勧めいたします。
デリケートゾーンのにおい対策
においの原因には、アポクリン腺のにおいだけでなく、細菌繁殖による臭いが原因のことがあります。
細菌性膣症の場合は、抗生剤の膣錠が有効です。
検査後に原因菌に合った抗生剤を使用しましょう。また、常在菌である乳酸菌がいなくなることにより細菌性膣症を繰り返す患者様もいらっしゃいます。
膣ピル「EBINEフローラ」
抗菌薬で治療した後は、乳酸菌を膣内に定着させてあげたいと思い、「EBINEフローラ」を開発いたしました。
私も使用しておりますが、生きた乳腺菌をフリーズドライにしてカプセルに入れたサプリメントですが、とても皆様に好評をいただきうれしい限りです。洗浄、保湿、乳酸菌サプリでケア。大切です。
乾燥症状が改善しない場合の治療法

デリケートゾーンの強い乾燥にどのような対策をしたらいいのか?
これらのホームケア対策をしているにもかかわらず、どうしても乾燥感がつらい、性交渉で外陰部が切れてしまう、かゆみで眠れないという患者さんもいらっしゃいます。
以前は、ステロイドホルモンの外用薬処方一辺倒で対応せざるを終えなかったのですが、医療用レーザー治療「モナリザタッチ」が効果的です。この治療法は、エストロゲン補充療法に伴うリスク(子宮体がん、乳がん、血栓症など)を避けたい方にも適しています。
当院のモナリザタッチ

導入して5年になりますが、400名以上の患者様に施術をさせていただき、3000回以上のレーザー治療を行いました。
治療される方の原因は様々ですが、もともとの症状の強い方は、「とても改善した!」と喜んでいただけることが多いです。
デリケートゾーンの乾燥は個人差が大きい症状です。症状の程度に合わせて、日常のケアから医療的な処置まで、適切な対策を選ぶことが大切です。お悩みの方はぜひ専門医にご相談ください。

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。