女性ホルモンにいいお食事がありますか?
更新日:2024.09.26
女性ホルモンにいいお食事がありますか?
私のファミリーは、母が栄養士、妹が薬剤師という構成で、小さい時から私たちがアトピー性皮膚炎だったことから、約50年前から栄養学を学び、有機野菜・低農薬の食品をとること、糖質や防腐剤や化学調味料を控えること、バランスの良い食品を摂取することを日常に教育を受けて参りました。
そのような思想を持ちながら、11年前にクリニックを開業し、6年前から妹が経営するクリニックビル1階のレストラン「Y.A.Bar」で健康度の高いメニューを提供してもらうようになりました。管理栄養士が監修するレストランです。
医療は、たくさんの薬剤を使用して治療を行うものですが、それだけではよくならない病気や症状もあります。特に、毎日摂取する栄養である食事は非常に大切です。毎日、どの様な治療薬が患者様に適しているかと同じくらい、どの食事を摂取すべきか考えております。アレルギーだけを言及するのであれば、除去食は言うまでもありません。しかしながら、除去するという「引き算」の考え方から、もっとたくさん摂取するという「足し算」の考え方の方が、私の性に合っていると思います。除去食で食べるものがなくなり、良い栄養が十分に取れないことも不健康になると考えております。
日本人は、「長寿の国ニッポン」です。そして、日本人にとってDNAにあった食品が日本食には含まれているはず。ぜひ、日本に受け継がれた大切な日本食を提供したいものです。しかしながら、欧米化の食事も近年日本人に受け入れられており、おいしさを損なわずに日本と西洋の融合したお食事を提供することは大切だと思っています。
ご飯も食べたいけど、トーストも食べたいけど、パスタも食べたい。納豆も食べたいけれど、ヨーグルトも食べたい。どれも大切な欲求で、私も納得がいきます。様々な組み合わせを考えてお食事を提供したいものです。
例えば、女性ホルモンにいいお食事はありますか?と時々、患者様に訊かれます。
まず大切なことは、低栄養にならないこと。低栄養状態になると更年期前の女性では、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌が低下して卵巣からのエストロゲン産生が低下する。その結果、無月経になり、自律神経失調症のような症状が出現します。副腎皮質ホルモン分泌は亢進して、免疫機能低下、ストレス耐性の低下に伴う不安が生じます。甲状腺機能低下により。体温維持が難しくなり、疲れやすくなります。更年期の原因は低エストロゲン。低栄養となることにより、症状が悪化するのは当然のことです。良質の栄養補充を心がけましょう。
若年の女性ホルモンが少ないという代表疾患に、摂食障害があります。中学1年~高校3年の発生頻度はおよそ1.0%といわれております。栄養を摂取することを「やせたい女子」はとても嫌がります。これらを摂取しないことで、脳内伝達物質の活性の低下と視床下部ホルモンの分泌を変化させます。このことにより、生命維持、生殖器の成長、骨形成に影響を及ぼし、これらを繰り返されると生命維持が難しくなり、死に至る場合もあります。成長に栄養は必要です。
では、栄養とは?これが難しい。人間の生命維持にまず大切なのが、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル。これが5大栄養素と呼ばれるものです。
まず、生命維持に一番大切なのは炭水化物。エネルギーになる「糖質」と消化吸収されずにエネルギーにならない「食物繊維」とに分けることができます。また、良い糖質とは消化吸収に時間がかかるでんぷんやほかの栄養素と組み合わさっている複合的な炭水化物。食後の血糖値の上昇が緩やかな方が神経伝達物質の過剰分泌を抑制します。
日本人にとってなじみの深い炭水化物は、お米。お米には、炭水化物(糖質+食物繊維)、たんぱく質、脂質が含まれており、優秀な炭水化物です。また、日本人のアレルギーは、鶏卵、牛乳、小麦。これらを大量に摂取しないことは、アレルギーを発症させないためには重要です。つまり、パン、パスタよりお米による炭水化物の摂取は理にかなっていると思います。
良いお米の定義は、栄養価が高いこと。まず、栄養たっぷりの肥料で育つお米がいいです。田んぼの肥料の量で、当たり前ですが育つお米の栄養価が変わります。可能な限り有機肥料で育ててもらいたいものです。人間もまだ、宇宙食だけで生きることができないことがわかっている通り、化学肥料だけでは育った食物は、我々が生きていく栄養素の何かが欠けていると思います。その次に、お米の生育に必須なのは良いお水。人間にもきれいな水が必要ですので、お米にもきれいなお水で育てられてほしいものです。次に、農薬。有機肥料を使用する限り、肥料をしっかり完熟させないと農薬が必要になってきます。有機肥料を使用し減農薬で作物を作る農家さんは、プロ中のプロでなくてはなりません。ここが難しいところです。土づくり10年といいますが、50年以上この仕事に携わっているナチュラルリンクの農家さんには、感動を覚えます。
まず、お米を摂取すること。日本人のDNAに適した炭水化物であるお米を摂取することをお勧めしております。
次にたんぱく質。良質なたんぱく質は、アミノ酸の含有バランスが良く含まれている動物性食品は、肉、魚介。植物性食品では大豆。これらを中心にお食事を構成したいものです。日本人は古くから、たんぱく質を魚介と大豆、大豆製品である納豆やお豆腐、お味噌やお醤油から摂取しておりました。シラスや焼き魚、シシャモなど、さらに具沢山のお味噌汁で完璧なお食事はないでしょうか?
しかしながら、少しはお肉を食べたいもの。お米と同様に可能な限り自然で成育された、バランスの良い、投薬の少ないお肉を摂取したいですね。ナチュラルリンクの黒豚は、50年前より日本で育てられた草を発酵したものを餌にしている飼育法にて育てております。飼育に時間がかかりますが、食する我々にとって安全が第一です。薬物残留がないようにステロイドや抗生剤の投与も行っておりません。
そして、女性ホルモンは脂質つまりコレステロールから作られます。このコレステロールは生体膜の原料でもあり、良い細胞を構成するには必須です。そして、脂質はエネルギー源となる炭水化物が足りないときに使われます。エストロゲンを産生するにはコレステロールが必要です。コレステロールはエストロゲンの前駆体であるプレグネノロンを経て最終的にエストロゲンに変換されます。このため、良質な脂質を摂取することは大切です。青魚やオリーブオイルやサラダ油がお勧めです。植物油の摂取に関する注意点は、酸化しない油で食することです。
しかしながら、更年期以降は脂質からエストロゲンに変換できません。このため、食品からエストロゲン様物質から摂取できないかと考えます。まず、大切なのが大豆食品。大豆にはイソフラボンと呼ばれる植物性エストロゲンが含まれています。イソフラボンは、エストロゲン受容体と結合し、エストロゲンと同様の効果をもたらすことがあります。このため、豆腐や納豆、豆乳摂取をお勧めします。まて、ブルーベリーやラズベリーなどのベリー類にもフィトエストロゲンが含まれており、エストロゲンの働きをサポートすると考えられております。
ただし、これらの食品はエストロゲン作用が比較的弱く、イソフラボンを摂取することによりエストロゲン作用を期待する場合には、バランスのとれた食事適切な摂取量を心がけることが大切です。
日本食をバランスよく食べる。これが大切です。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。