梅毒で思うこと
更新日:2024.02.02
梅毒
どうして梅毒という名前を知っていたのかを考えると、私が福島県出身で猪苗代湖のそばにある野口英世記念館を訪れたことがあるからかもしれません。1911年に病原性梅毒スピロヘータの純培養に成功し、1913年に梅毒スピロヘータを進行性麻痺・脊髄癆の患者の脳の病理組織において確認したこととこの病気が梅毒の進行した形であることを証明したとのことですが、あまり梅毒の病態を理解できませんでした。医学生になった後もよくわからない怖い病気、そして、現在はほとんど診察することのないレアな病気と思って研修医時代を過ごし、初めて梅毒の治療にあたったのは医師になって6年目。80歳の高齢の患者さんでした。ペニシリンの治療を行い、スムーズに治療は終了しました。
その後、10年ほどの月日が流れたある日、22歳の女の子が外来にいらっしゃいました。診察室に入るとすぐに両手掌をひろげて、
女の子「先生、この手、何に見えますか」
女の子「今日、皮膚科に行ってきました」
私「何と言われましたか?」
女の子「急性湿疹です」
女の子「先生、この手、何に見えますか?」
私「梅毒に見えます」
女の子「ありがとうございます」
印象的なこの外来の状況をよく覚えています。患者さんは、ごく普通の感じの女の子。手掌の湿疹は、教科書で見た典型的なバラ疹。足の裏のも頭皮にも同じような所見がありました。感染は半年前のたった1回のアクシデント。本人はとても後悔していらっしゃいました。血液検査後、梅毒の確定診断を行い、治療を行いました。何度もネット検索して、診断をしてもらえる病院を探していたようです。
それから、また10年ほど経ちました。開業して毎日50人以上の患者さんを診察しております。そして、若い女の子が性病検査に訪れ、梅毒の患者さんを時々見かけるようになりました。未治療のままでは死に至る梅毒。耳慣れない言葉ですが、どんどん感染者が増える中、できれば早期発見早期治療、心がけたいと思っております。
ちゃんとペニシリンの治療が有効です。
心配あれば、ご受診してください。検査してみてください。
白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。