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性犯罪被害者支援に必要な法的知識と医療対応について産婦人科の女性医師が丁寧に解説。

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私が医師として働く中で、最も信頼する女性弁護士がいます。

それは、虎ノ門で事務所を構える金澄道子先生です。金澄先生とは、もう15年以上の付き合いになります。

若い頃、私は埼玉医科大学総合医療センターの総合周産期母子医療センターに勤務していました。そこでは、性犯罪被害に遭った患者様が警察と共に訪れ、昼夜問わず、診療を行っていました。

当時、私のような女性産婦人科医は、医師全体の中でもわずか5%でした。

そのため、女性医師としての使命感から、性被害に遭った患者様に対しては、常に誠心誠意を持って対応していました。しかし、まだ未熟だった私は、医療面では対応できても、性犯罪に関する法的支援については悩んでいました。特に、信頼できる弁護士との出会いを求めていました。

その後、結婚・妊娠・出産を機に大学病院を辞め、クリニックでのアルバイトを始めたことで、虎ノ門のクリニックで金澄先生と出会うことができました。女性支援に精力的に取り組まれている金澄先生に相談したことで、私は性被害者に対する診療の在り方が明確になりました。

以下のような診療方針を確立することができました。

性犯罪被害者の診療方針

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1. 守秘義務を厳守して、状況をきちんと聞いて、カルテに書き留めること
2. 診察時に外傷の有無などの視診をきちんと行うこと
3. できれば、恐怖心を与えずに診療を行うこと
4. 被害者が希望すれば、速やかに警察、弁護士と連携できる情報を提供すること
5. DVや虐待、PTSDなどにも考慮して、状況により精神科や心理カウンセラーの情報を提供すること

性犯罪の診療において、警察と連携しながら、DNA鑑定や性病検査を行い、必要に応じて緊急避妊ピルの処方も行っています。このような場合、検査費用は警察がクリニックに直接支払う仕組みになっています。

不同意性交等罪について

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最近、産科婦人科学会のウェブサイトを確認したところ、性犯罪に関する法整備がますます進んでいることを実感しました。ご存じない方もいらっしゃると思うので一部抜粋で掲載させて頂きます。

「強制性交罪」から「不同意性交等罪」

令和5年7月に刑法が改正され、それまで「強制性交罪」とされていた罪名が「不同意性交等罪」となりました。

平成29年の改正で「強姦罪」が「強制性交罪」となり、それまでは女性のみであった被害者が性別を問わず広がり、性器性交だけでなく肛門性交や口腔性交も含まれるようになりましたが、暴行または脅迫を用いてという要件は残っていました。

今回の改正では、暴行・脅迫に加え、心身の障害、アルコールまたは薬物の影響、睡眠その他の意識不明の状態、同意しない意思を表明しているかそのいとまがない場合、予想と異なる事態に直面することで恐怖や驚愕している状態、虐待に起因する心理的反応、経済的または社会的感関係上による地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることに乗じて性交した場合が加えられました。

同意をしていない意思を表明している場合だけでなく、その隙を与えず相手が性交に及んだ場合や、恐怖や驚愕のためにフリーズしている状態、経済的または社会的地位に基づくパワーバランスから断りづらい状態が条文に盛り込まれ、より広い状況下で性交が不同意性交として認められるようになりました。

公益社団法人日本産科婦人科学会HPより一部抜粋

しかしながら、金澄先生とお話しすると、いきなり性犯罪の被害者が警察に行くのは敷居が高いのでは?といわれました。

実は、私が気にしているのは、診察時にしっかりカルテに証拠を残しておきたい、DNA鑑定もできればしたほうがいいと思ってるので、どの時点で警察に協力してもらうか、また、その費用面をどうすべきかを悩んでおりました。

そして、厚労省のHPから以下の内容を確認しました。

犯罪被害による傷病の保険給付の取扱いについて〔国民健康保険法〕

(平成26年3月31日)
(/保保発0331第1号/保国発0331第2号/保高発0331第12号/) (全国健康保険協会理事長・健康保険組合理事長・都道府県国民健康保険主管課(部)長・都道府県後期高齢者医療主管課(部)長あて厚生労働省保険局保険課長・厚生労働省保険局国民健康保険課長・厚生労働省保険局高齢者医療課長通知)
(公印省略)


犯罪の被害を受けたことにより生じた傷病は、医療保険各法(健康保険法(大正11年法律第70号)、船員保険法(昭和14年法律第73号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)及び高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号))において、一般の保険事故と同様に、医療保険の給付の対象とされている。

また、加害者が保険者に対し損害賠償責任を負う旨を記した誓約書があることは、医療保険の給付を行うために必要な条件ではないことから、犯罪の被害者である被保険者が当該誓約書を提出することがなくとも医療保険の給付は行われる。

こうした取扱いについては、平成23年8月9日付保保発0809第3号・保国発0809第2号・保高発0809第3号厚生労働省保険局保険課長・国民健康保険課長・高齢者医療課長連名通知「犯罪被害や自動車事故等による傷病の保険給付の取扱いについて」(別紙1)でお示ししたところである。

犯罪被害による傷病の保険給付の取扱いについて〔国民健康保険法〕より一部抜粋

被害にあった人でも、保険適応で診察可能とわかり、診療に迷いがなくなりました。

もっともっと被害者にやさしい世界になってもらえるように、非力ながら協力したいと思っております。

まとめ

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埼玉医科大学総合医療センターでの経験を通じて、性犯罪被害者への医療対応の重要性とその限界を痛感した私が、虎ノ門の女性弁護士・金澄道子先生との出会いをきっかけに、法的支援と医療の連携による包括的な支援体制を築いてきた過程を紹介しました。性犯罪に関する法整備が進む中、医療と法の協力が被害者の救済に果たす役割の重要性を再確認しました。

性犯罪の被害に遭われた方へ。あなたの苦しみを軽んじることなく、心から寄り添い、必要な支援を提供するために、私たちは医療と法律の両面から全力でサポートいたします。あなたは一人ではありません。安心して、信頼できる専門家に相談してください。私たちがあなたを守り、未来への一歩を共に歩んでいきます。

院長 海老根真由美

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)

産婦人科医師・医学博士

埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。

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