性交後に下腹部が痛むのはなぜ?原因・病気・受診目安・治療法を婦人科女医が詳しく解説!
更新日:2025.09.18

「もしかして、何か悪い病気…?」
性行為のあとに下腹部が痛む…。
一度でも経験すると、不安になりますよね。
その痛みは、体位などによる一時的な刺激かもしれません。
しかし、放置すると不妊にもつながる子宮内膜症や性感染症が隠れているサインの可能性もあります。
この記事では、婦人科医が危険な痛みのサインから原因別の対処法、今すぐできる予防策までを分かりやすく解説します。
ご自身の症状と照らし合わせ、不安を解消する一助となれば幸いです。
この記事でわかる3つのポイント
- 繰り返す下腹部痛の裏には、子宮内膜症や性病など不妊につながる病気が隠れている可能性があること
- 激痛や発熱は、卵巣出血や子宮外妊娠の破裂、卵巣嚢腫の破裂や茎捻転など、命に関わる危険なサインであること
- 痛みの原因はさまざまで、正しい検査をしないと根本的な解決にならないこと
「繰り返す痛みで不安」
「検査に行くべきか迷っている」
という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
性交後の下腹部痛とは?

性交後の下腹部痛(postcoital pelvic pain)とは、性行為の直後から数時間以内に下腹部に痛みを感じる状態を指します。
痛みの出方は人によって異なる
1.性交直後から差し込むような痛み
子宮頸部や卵巣への物理的刺激、卵巣嚢腫の破裂や茎捻転、卵巣出血、子宮外妊娠の破裂や性病などの炎症によることが多い
2.性交後しばらくしてからじわじわ痛む
子宮内膜症や骨盤内炎症など、病気が背景にある可能性および性病
3.翌日に残るような鈍痛
慢性炎症やホルモン関連の影響
一過性の痛みと病的な痛みの違い
一過性の痛み
- 体位・摩擦・疲労などが原因
- 自然に治まる、繰り返さない
病的な痛み
- 毎回起こる、強い痛みが長引く
- 出血・発熱・おりもの異常などを伴う
- 妊娠初期や不妊のリスクが隠れていることも
Check point
性交後の下腹部痛は「よくあること」と軽視されがちですが、繰り返す・強い・他の症状を伴う 場合は婦人科受診が必要です。
性交後に下腹部痛が起こる主な原因

性交後に下腹部が痛む原因は多岐にわたります。
大きくは 外傷・刺激/感染症・炎症/婦人科系疾患/排卵・妊娠関連/ホルモン性変化 に分けられます。
1.外傷や物理的刺激
・深い挿入で子宮頸部が刺激される
子宮の奥(頸部)が動かされると、子宮周囲の癒着や炎症がある患者さんは、とても痛みを伴います。体位や深さによって刺激が加わると差し込むような痛みを感じることがあります。
・摩擦による膣や外陰部の炎症
潤滑不足や膣の乾燥により摩擦が強まると、膣粘膜が赤くただれて炎症を起こし、性交後に下腹部まで痛みが波及することがあります。会陰部や膣口の裂傷が生じることもあります。
【Check】
一過性で軽い痛みが多いですが、繰り返す場合は粘膜保湿(潤滑剤や保湿ジェル)で予防できます。
2.感染症・炎症によるもの
感染症は性交後の痛みの大きな原因の一つです。
・膀胱炎・腎盂腎炎
性交をきっかけに尿道から細菌が侵入し、膀胱炎を発症することがあります。排尿痛や頻尿を伴い、炎症が広がると下腹部痛や急な発熱を伴います。
・骨盤内炎症性疾患(PID)
クラミジアや淋菌の感染が子宮・卵管・卵巣に広がると、腹腔内に癒着を生じ、性交後の強い下腹部痛や慢性的な鈍痛の原因になります。不妊症や卵管閉塞のリスクにも直結する重要な病気です。
・子宮内膜炎
細菌感染により子宮内膜に炎症が起こると、性交後の痛みや異常出血を引き起こします。【Check】
これらは放置すると慢性化・不妊・重症感染症につながるため、早期診断と治療が重要です。
3.婦人科系疾患によるもの
・子宮内膜症
子宮以外に内膜組織ができ、子宮内膜症の病態を生じていると腹腔内に癒着が生じ、それが性行為で刺激されると強い下腹部痛が起こります。慢性的に繰り返すのが特徴で、不妊リスクとも関連します。
・子宮筋腫
子宮の筋肉にできる良性腫瘍。大きさや部位によって性交時や性交後に圧迫痛が出ることがあります。疼痛と感じる方もいらっしゃいます。
・卵巣嚢腫、卵巣出血
卵巣にできた嚢胞が破裂または茎捻転を起こすこと、排卵時の出血が性交の刺激で悪化して内出血を起こしたり腹腔内出血を生じると、突然の激しい痛みを伴うことがあります。
【Check】
婦人科系疾患による痛みは「慢性的に繰り返す」「周期に関連する」ことが特徴です。
4.排卵・妊娠関連
・排卵期痛(中間期痛)
排卵期に卵巣から卵子が飛び出す際に出血が起こり、性交刺激で出血が広がり、痛みが強まることがあります。
・妊娠初期の子宮過敏状態
妊娠初期はホルモンの影響で子宮が充血しやすく、性交で下腹部に痛みを感じやすくなります。
・子宮外妊娠
受精卵が卵管に着床してしまう状態。性交後に着床部位が破裂して、下腹部の激痛や出血を伴い、放置すると命に関わる危険があります。
【Check】
妊娠可能性がある方の強い下腹部痛は、必ず医療機関で確認する必要があります。
5.ホルモン性変化によるもの
・更年期や授乳期
エストロゲン低下により膣粘膜が薄く乾燥し、性交刺激で炎症や痛みを起こしやすくなります。
・低用量ピル使用中
ホルモンバランスの変化で一時的に不正出血や下腹部痛を感じることがあります。
【まとめ】
このように性交後の下腹部痛には、単純な刺激から重大な病気まで幅広い原因があります。
不妊や妊娠への影響はある?

性交後の下腹部痛は、その背景にある病気によっては 妊娠しづらくなるリスク や 妊娠初期のトラブル と関係する場合があります。
単なる一過性の痛みか、それとも将来に影響するサインなのかを見極めることが大切です。
1.子宮内膜症と不妊リスク
・特徴
子宮内膜症は子宮以外の場所に子宮内膜ができてしまう病気で、性行為後の下腹部痛や生理痛の悪化がよく見られます。
・不妊への影響
- 卵管の癒着や閉塞によって受精卵が通れなくなる
- 卵巣機能が低下し、排卵障害につながる
- 慢性炎症が着床を妨げる
【Check】
性交後に毎回痛みが強い/生理痛も重い場合
子宮内膜症が隠れている可能性があるため早期の婦人科受診が必要です。
2.骨盤炎症性疾患(PID)と不妊
・特徴
クラミジアや淋菌などの性感染症が進行すると、子宮や卵管・卵巣まで炎症が広がり骨盤内炎症性疾患(PID)となります。
・不妊への影響
- 卵管閉塞や癒着により卵子が移動できない
- 受精卵の着床が妨げられる
【Check】骨盤内炎症性疾患(PID)
骨盤内炎症性疾患(PID)は放置すると不妊だけでなく、卵管妊娠(子宮外妊娠)の原因にもなるため注意が必要です。
3.子宮筋腫・卵巣嚢腫
- 子宮筋腫が大きくなると受精卵の着床障害が生じるため、不妊の原因になることがあります。卵管角に近い部分の子宮筋腫は、受精卵の通過障害を引き起こす可能性があります。
- 卵巣嚢腫も卵巣機能を低下させることがあり、排卵に影響するケースがあります。
4.妊娠初期の性交後の痛み
- 妊娠初期はホルモンの影響で子宮が充血しやすく、性交で下腹部に痛みが出やすくなります。
- 軽い痛みであれば一過性ですが、強い痛み・鮮血を伴う出血 がある場合は切迫流産の可能性もあり、受診が必要です。
5.子宮外妊娠(異所性妊娠)
- 卵管に受精卵が着床すると、妊娠反応が出ても受精卵の発育する環境が整わず、卵管破裂による腹腔内出血を起こすことがあります。
- 性交後に突然の激しい下腹部痛と出血 がある場合は、卵管破裂などの緊急手術が必要な場合もあり、すぐに救急受診が必要です。
まとめ
性交後の下腹部痛の中には、
・子宮内膜症や骨盤内炎症性疾患(PID)
⇒ 不妊リスク
・妊娠初期や子宮外妊娠
⇒ 母子の命への重大な影響
と直結するものがあります。
「妊娠できるか不安」
「赤ちゃんに影響しないか心配」
という潜在的な不安に答えるには、早めの婦人科検診 が欠かせません。
痛みの特徴からセルフチェック

性交後の下腹部痛といっても、痛みの出方や一緒に現れる症状はさまざまです。
実はその「痛み方」や「随伴症状」を手がかりにすると、原因の見当をある程度つけることができます。
1.鈍い痛み(ズーンと重い感覚)
・特徴
- 性行為のあとに下腹部が重だるい
- 数時間〜翌日まで続くことがある
・考えられる原因
- 子宮内膜症(慢性的な炎症)
- 子宮筋腫による圧迫
- 排卵期痛(排卵に伴う軽い炎症)
- 性感染症および骨盤内腹膜炎
Check point
生理周期と連動しているか、毎回同じタイミングで起きていないか
2.差し込むような鋭い痛み
・特徴
- 挿入の奥で「ズキッ」とくる
- 体位を変えると出やすい
・考えられる原因
- 深い挿入での子宮頸部刺激
- 卵巣嚢腫の破裂や茎捻転、卵巣出血、子宮外妊娠の破裂
Check point
激痛が突然出る場合は、卵巣出血や子宮外妊娠など緊急性がある病気の可能性も
3.ジンジンと持続する痛み
・特徴
- 性交後に下腹部が熱をもったように痛む
- 排尿痛や頻尿を伴うことが多い
・考えられる原因
- 膀胱炎・尿道炎
- 性感染症
- 骨盤炎症性疾患(PID)
Check point
排尿時のしみる感じ・発熱・おりもの異常を伴っていないか
4.痛みに加えて出血がある
・特徴
- 性交後に鮮血やピンク色の出血がある
- 痛みとセットで出ることが多い
・考えられる原因
- 子宮頸部びらん・ポリープ
- 性感染症(クラミジア・淋菌)
- 子宮頸がん・体がん(頻度は少ないが注意)・卵巣がん
- 子宮内膜ポリープ
Check point
出血が毎回ある、量が多い場合は必ず受診
5.発熱や強い全身症状を伴う
・特徴
- 痛みに加えて38℃以上の発熱
- 吐き気や倦怠感も伴う
・考えられる原因
- 骨盤炎症性疾患(PID)
- 卵巣膿瘍・卵巣出血
- 卵巣がん
Check point
これは救急レベル!早急に受診してください。
【まとめ】セルフチェック早見表
痛みのタイプ | よくある原因 | 受診の目安 |
---|---|---|
ズーンと重い鈍痛 | 子宮内膜症・子宮筋腫・排卵期痛 | 数日以内に受診を検討 |
ズキッと鋭い差し込み | 深い挿入・卵巣嚢腫・卵巣出血 | 早めの受診 |
ジンジン続く痛み+排尿痛 | 膀胱炎・尿道炎・PID | 婦人科 or 泌尿器科受診 |
痛み+出血 | 頸部病変・性感染症・腫瘍性疾患 | 毎回なら必ず受診 |
発熱+激痛 | PID・卵巣出血・子宮外妊娠 | 救急受診レベル |
受診が必要なケース

性交後の下腹部痛は一時的な刺激で起こることもありますが、放置してはいけないサイン の場合もあります。
ここでは「受診が必要かどうか」を判断するための目安を整理します。
1.今すぐ受診すべきケース(緊急性あり)
・突然の激しい下腹部痛
卵巣出血・卵巣嚢腫破裂・子宮外妊娠の破裂の可能性。放置すると腹腔内出血につながり命に関わります。
・発熱を伴う下腹部痛(38℃以上)
骨盤内炎症性疾患(PID)や卵巣膿瘍など重症感染症の可能性。
・鮮血を伴う大量の出血+強い痛み
切迫流産、頸管妊娠、筋腫分娩、子宮頸部や子宮体部の悪性腫瘍性疾患などの可能性。
【Check】
これらは救急外来を含めて、直ちに医療機関を受診してください。
2.数日以内に受診すべきケース(早めに診察が必要)
- 性交のたびに毎回痛みが出る
- 繰り返す鈍痛や違和感が数日続く
- 痛みに加えておりものの量・色・匂いが変化している
- 不妊が心配、または妊娠を希望しているが痛みが頻発している
【Check】
子宮内膜症・子宮筋腫・性感染症など、慢性疾患が隠れている可能性があります。
3.経過観察してよいケース(軽度・一過性)
- 特定の体位でだけ差し込み痛が出る
- 潤滑不足による摩擦で軽い痛みが起きたが、翌日には改善している
- 疲労や体調不良のときだけ一時的に痛む
【Check】
ただし「様子を見てよい」とは言っても、繰り返す場合や気になる場合は受診をおすすめします。
まとめ
性交後の下腹部痛を放置してよいかどうかは、
- 強さ(軽い/強い)
- 持続時間(一過性/長引く)
- 随伴症状(出血・発熱・おりもの異常)
この3点で判断します。
【Must Check】以下は必ず受診!
ポイントは「強い・長引く・繰り返す・他の症状を伴う」場合は必ず受診、です。
婦人科で行う検査

性交後の下腹部痛の原因を明確にするには、自己判断では不十分です。
婦人科では、問診や診察に加えて、以下のような検査を組み合わせて診断します。
1.問診・視診・内診
問診
- 痛みのタイミング(直後・数時間後・翌日)
- 痛みの種類(鈍痛/差し込み/持続痛/激痛)
- 随伴症状(出血・おりもの異常・発熱など)
内診・視診
- 子宮頸部・膣内の状態を直接確認。
- びらん・ポリープ・腫瘍性変化の有無を見ます。
2.膣分泌物検査(おりもの検査)
- 細菌培養や顕微鏡検査で細菌性膣症、カンジダ、トリコモナスなどの有無を確認。
- 性感染症の初期兆候も分かります。
3.性感染症検査(クラミジア・淋菌など)
- 核酸増幅検査という高感度の検査で確定診断できます。
- 子宮頸部・尿・膣分泌物を採取して調べ、早期発見・早期治療につなげます。
4.超音波検査(経膣エコー)
- 子宮や卵巣の状態をリアルタイムに観察。
- 子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣嚢腫・卵巣出血・子宮外妊娠・子宮内膜ポリープ・などを発見するのに有効です。
5.妊娠検査
- 性交後に下腹部痛がある場合、妊娠初期のトラブルや子宮外妊娠を除外することが重要。
- 尿検査・血液検査で妊娠反応を確認します。
6.血液検査
- 炎症反応(CRP・白血球数)
⇒ 感染症や炎症の有無を確認 - ホルモン検査
⇒ 排卵障害・更年期の影響などを評価
【Check point】
婦人科での検査は、「重大な病気を見逃さないこと」 が最大の目的です。
早期に原因を特定できれば、不安も解消され、適切な治療につなげられます。
治療法(原因別)

性交後の下腹部痛の治療は、原因に応じて大きく異なります。
ここでは主な原因ごとの標準的な治療と、当院で可能なサポートについて解説します。
1.感染症・炎症による場合
膀胱炎・腎盂腎炎
- 抗菌薬の内服(症状が強い場合は点滴)
- 水分摂取を増やし、膀胱内を洗い流すことも大切
骨盤内炎症性疾患(PID)クラミジア・淋菌など)
- 抗菌薬の内服(症状が強い場合は点滴)
- パートナーも同時治療が必要(再感染予防のため)
- 重症例では入院点滴治療
子宮内膜炎
- 抗菌薬の内服(症状が強い場合は点滴)
- 発熱・下腹部痛が強い場合は入院点滴療法
【Check】感染症由来は早期治療が肝心!
放置すると不妊や慢性疾患化につながるため、迅速な診断と治療が重要です。
2.婦人科系疾患による場合
子宮内膜症
・鎮痛薬(NSAIDs)で痛みを緩和
・ホルモン療法(低用量ピル・黄体ホルモン製剤その他)で病変の進行を抑制
・卵巣腫瘍が大きく、悪性との鑑別がむずかしい場合は手術療法
子宮筋腫
- 小さい場合、症状のない場合は
⇒ 経過観察 - 痛みや頻尿などの症状が強い場合
⇒ ホルモン療法や手術(筋腫核出・子宮全摘など)
卵巣嚢腫・卵巣出血
- 小さい嚢腫で良性の可能性が高い場合
⇒ 経過観察 - 嚢腫が大きい・悪性の可能性が/破裂のリスクあり
⇒ 腹腔鏡手術または開腹手術 - 急な強い痛みは救急での対応が必要
3.妊娠関連の場合
妊娠初期の子宮過敏状態
- 基本は安静で経過観察
- 強い痛みや出血がある場合は「切迫流産」として安静・投薬の可能性
子宮外妊娠
- 妊娠部位の確認
- 破裂の恐れがある場合は緊急手術
4.外傷や粘膜の乾燥による場合
潤滑不足や膣の乾燥が原因なら、以下の対策が有効です
- 潤滑剤の使用
- デリケートゾーン専用保湿ケア
- 当院オリジナルの エビネジェル・エビネセラム を活用し、膣粘膜のうるおいを保つ
5.更年期・ホルモン性の変化による場合
萎縮性膣炎(エストロゲン低下による膣の乾燥・炎症)
- 局所エストロゲン治療(膣錠)
- モナリザタッチ(膣レーザー治療)で粘膜を再生・保湿
- 併せてエビネジェル・セラムによる日常ケア
【まとめ】治療は原因を正しく特定することから
治療の基本は「原因を正しく特定して、それに合った治療を選ぶこと」。

当院では、保険診療での感染症・婦人科疾患の治療に加え、自費での「レーザー治療(モナリザタッチ)」や「エビネシリーズ」による粘膜ケアもご提案可能です。
性交後の下腹部痛…まず自分でできる応急処置は?

痛みが現れたとき、病院へ行く前に不安になってしまいますよね。
ここでは、痛みが比較的軽く、発熱や大量の出血がない場合に試せる応急処置をご紹介します。
【注意】あくまで一時的な対処法です。
これから紹介する方法を試しても痛みが続く、悪化する、または毎回繰り返す場合は、必ず婦人科を受診してください。
我慢できないほどの激痛や発熱を伴う場合は、すぐに医療機関(夜間・休日は救急外来)へ連絡してください 。
1.楽な姿勢で安静にする
お腹の筋肉の緊張をゆるめることが大切です。
ベッドやソファに横になり、膝を軽く曲げた姿勢(シムスの体位)をとると、腹部の圧迫が減って楽になります。締め付けの強い下着や洋服は避け、リラックスできる服装で過ごしましょう。
2.体を温める
冷え性による腹痛の場合、カイロや湯たんぽ、温かいブランケットなどで下腹部や腰回りを優しく温めましょう。
血行が良くなることで、筋肉の緊張がほぐれ、生理痛のようなズーンとした鈍痛が和らぐことがあります。ただし、低温やけどには十分注意してください。
3.市販の鎮痛薬の服用について
生理痛に使うような市販の鎮痛薬(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)で痛みが和らぐこともあります。
しかし、これは根本的な原因の解決にはなりません。薬で痛みを抑えることを繰り返していると、背景にある子宮内膜症などの病気の発見が遅れる可能性があります 。
あくまで「一時しのぎ」と考え、痛みが続く場合は必ず医師に相談しましょう
予防とセルフケア

性交後の下腹部痛を防ぐには、原因を取り除く治療とあわせて、日常生活での工夫も重要です。
ここでは、再発を防ぎ、安心して性生活を送るためのセルフケア方法をご紹介します。
1.性交前後の工夫
潤滑を十分にする
潤滑不足は摩擦や外傷の原因となり、痛みを引き起こします。自然な潤滑が少ないときは、潤滑剤を活用しましょう。
清潔を心がける
性交前に軽くシャワーで清潔にし、性交後はできるだけ早く排尿して細菌を洗い流すことが膀胱炎予防に有効です。
体位の工夫
深い挿入で痛みが出やすい方は、角度を調整できる体位を選ぶと負担が軽減されます。
2.膣フローラを整える

膣内には「ラクトバチルス菌」という善玉菌が存在し、感染から守っています。疲労やストレスでバランスが崩れると、膣炎や膀胱炎を起こしやすくなります。
【Check】当院独自ケア
当院では、膣内環境をサポートする EBINE flora(膣内乳酸菌サプリ) をご提案しています。
3.保湿ケアで粘膜を守る

乾燥した粘膜は摩擦に弱く、痛みや出血を起こしやすくなります。
これらを継続的に使用することで、粘膜のうるおいを守り、性交後の違和感や痛みを予防できます。
4.生活習慣の改善
- 十分な睡眠と休養
⇒ 免疫力を高め、感染症予防に - バランスの取れた食事
⇒ 鉄分・亜鉛・ビタミンを意識 - ストレスケア
⇒ 自律神経の乱れは膣の乾燥・免疫力低下につながります
5.定期的な婦人科検診
性交後の下腹部痛の中には、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮頸がんなど重大な病気が隠れていることもあります。
「痛みがある時だけ受診する」のではなく、定期的な婦人科検診でチェックすることが最善の予防策です。
★セルフケアのポイント
ポイントは「潤滑+清潔+粘膜ケア+体調管理+検診」。
セルフケアを組み合わせることで、性交後の下腹部痛を大幅に減らすことができます。
【パートナーとの協力も大切】男性側に関連する要因

性交後の痛みは女性側の体調や病気だけでなく、パートナーとの関係性や行為そのものが関わっている場合もあります。
痛みを我慢せず、お二人で解決策を見つけることが、より良い関係につながります。
1.挿入の深さや角度、激しさ
深い挿入や激しいピストン運動は、子宮の入り口である子宮頸部に直接的な刺激を与え、鋭い痛みを引き起こす原因となります 。これは病気ではなく、物理的な刺激によるものです。
・パートナーとの相談
「その角度だと奥が痛いかも」「もう少しゆっくりだと嬉しい」など、勇気を出して感じたことを伝えてみましょう。
・体位の工夫
女性が体勢をコントロールしやすい騎乗位(女性上位)などを試してみるのも一つの方法です 。
2.潤滑不足への配慮不足
女性の体が性的に興奮し、十分に濡れる(潤滑する)前に行為が始まると、摩擦によって膣やその周辺が傷つき、炎症を起こして痛みの原因となります 。
・前戯の重要性
パートナーには、焦らずに十分な時間をかけてコミュニケーションや愛撫を行い、女性の心と体の準備が整うのを待ってもらうよう協力をお願いしましょう。
3.性感染症(STI)
クラミジアや淋菌といった性感染症は、女性側では骨盤炎症性疾患(PID)を引き起こし、性交痛の大きな原因となります 。
これらの感染症は、パートナーから感染するケースがほとんどです。
・パートナーの無症状
男性は性感染症に感染していても症状が出ないことが多く、気づかないうちにパートナーに感染させている可能性があります。
・同時治療の徹底
感染が判明した場合、再感染を防ぐために必ずパートナーも一緒に検査・治療を受ける必要があります 。これは非常に重要なポイントです。
よくある質問(FAQ)

Q1. 性交後に毎回下腹部が痛いのは病気ですか?
A1. 毎回痛みが出る場合、チョコレート嚢胞(子宮内膜症の一種)や骨盤炎症性疾患(PID)など、治療が必要な病気が背景にある可能性があります。痛みを繰り返すなら、我慢せずに早めの受診をおすすめします。
Q2. 排卵痛と性交後の下腹部痛はどう違うの?
A2. 排卵痛は排卵期に一時的に出る痛みで、月経周期と連動するのが特徴です。一方、性交後の痛みは周期に関係なく起こり、体位や感染症・疾患が関与する場合があります。
Q3. 妊娠初期に性交後の下腹部痛があるのは危険ですか?
A3. 軽い痛みは一過性のこともありますが、妊娠中は切迫流産や子宮外妊娠の可能性が考えられます。母体と赤ちゃんの安全のためにも、ためらわずにすぐに医療機関を受診してください。
Q4. 婦人科と泌尿器科、どちらを受診すればいい?
A4. 下腹部痛だけなら婦人科での受診が第一選択です。排尿痛や血尿を伴う場合は泌尿器科と併せて相談するのが良いでしょう。
Q5. セルフケアで改善できますか?
A5. 軽度の痛みであれば、潤滑剤や保湿ジェルの使用、性交後の排尿・清潔保持で改善することがあります。ただし、痛みが繰り返す場合は必ず受診してください。
Q6. 性交後に下腹部が痛むとき、ロキソニンなどの鎮痛薬を飲んでもいいですか?
A6. 一時的に痛みを和らげるために市販の鎮痛薬を使用すること自体は問題ありません。
しかし、それはあくまで対症療法です。鎮痛薬でごまかしていると、背景にある子宮内膜症などの病気の発見が遅れてしまう可能性があります。痛みが繰り返す場合は、自己判断で薬を飲み続けず、一度婦人科で原因を調べてもらうことが重要です。
Q7. ピルを飲んでいると性交痛は改善しますか?逆に原因になることもありますか?
A7. 両方の可能性があります。痛みの原因によって、ピルの影響は異なります。
- 【改善するケース】
月経困難症や子宮内膜症による痛みの場合、低用量ピルはホルモン療法として病変の進行を抑え、痛みを緩和する効果が期待できます。 - 【原因となるケース】
一方で、ピルの長期投与などの低エストロゲン状態が持続すると、性交痛を引き起こすことがあります。 もしピルを飲み始めてから痛みが気になる、または痛みが続く場合は、自己判断で中断せず、処方した医師に相談してください。
Q8. 下腹部の右側だけ、または左側だけがピンポイントで痛むのはなぜですか?
A8. ただし、必ずしも重い病気とは限りません。
下腹部の左右には卵巣があるため、片側だけの痛みは卵巣に関係するトラブルの可能性があります。考えられる原因としては、排卵に伴う痛み(排卵期痛)、卵巣嚢腫や卵巣出血などが挙げられます。稀ですが子宮外妊娠の可能性も考慮すべきです。痛みが強い、または持続する場合は、原因を特定するためにも早めに受診してください。
右側だけ痛い場合の鑑別診断に虫垂炎があることも注意が必要です。
Q9. ストレスや疲れが溜まっていると、性交後に痛みが出やすいですか?
A9. はい、その可能性は十分にあります。
ストレスや疲労は、体の免疫力を低下させ、細菌性膣症や膀胱炎などの感染症を引き起こしやすくします。
また、自律神経の乱れは膣の潤滑不足にもつながり、摩擦による痛みを引き起こすこともあります。十分な休養をとることは、痛みの予防にもつながります。
Q10. 出産後や授乳中に性交痛が起こりやすくなるのはなぜですか?
A10. はい、出産後や授乳期は、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が一時的に大きく低下するため、性交痛が起こりやすい時期です 。エストロゲンが減少すると、膣の粘膜が薄く乾燥しやすくなり、潤いが不足しがちになります 。その状態で性交をすると、摩擦によって痛みやヒリヒリ感、出血などを引き起こすことがあります。
まずは潤滑剤を試すのがおすすめです 。セルフケアで改善しない場合や、痛みが強い場合は我慢せず婦人科にご相談ください。ホルモンを補充する塗り薬などで治療することも可能です 。
まとめ

性交後の下腹部痛は、一時的な刺激によるものから、子宮内膜症・性感染症・卵巣疾患・子宮外妊娠など重大な病気まで、原因はさまざまです。
・軽度で一過性
⇒ 体位や潤滑不足による刺激が多い
・繰り返す・強い・長引く痛み
⇒ 婦人科系疾患や感染症の可能性
・激痛・出血・発熱を伴う
⇒ 緊急性があり、すぐに医療機関を受診すべきサイン
大切なのは、「自然に治るかも」と放置せず、原因を特定して適切に対処すること。
当院では、保険診療による感染症や婦人科疾患の治療に加え、モナリザタッチやエビネジェル・セラム、EBINE floraといった自費診療・ホームケアまで幅広くサポートしています。
不安を抱えたまま性生活を続けるのではなく、安心してパートナーとの時間を過ごせる状態を一緒に目指しましょう。
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白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。