【放置して大丈夫?】子宮頸管ポリープが見つかったあなたへ 妊娠・がん・切除の不安を女医が解説!
更新日:2025.08.13

「子宮頸管ポリープ」を聞いたことがありますか?
あまり聞いたことがないかもしれませんが、比較的多くの方に発生するものです。
ほとんどが良性ですが、不正出血やおりものの変化などの症状を引き起こすこともあります。
また、「ポリープ=がんになる」というイメージから、不安になる方もいらっしゃるでしょう。
今回の記事では、子宮頸管ポリープの原因や症状、治療が必要な場合の見極め方、妊娠との関係、治療の流れまで、わかりやすくご紹介します。あまり心配しすぎる必要はありませんが、知っておいていただきたい疾患の1つです。
目次
子宮頸管ポリープとは?
「子宮頸管ポリープ」は、あまり聞いたことがないという方も多いと思います。まずは、子宮頸管ポリープについて知ってください。
子宮頸管にできるポリープの正体
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腟の奥、子宮の入り口(頸部や腟部)に発生する小さな「できもの」のことを、子宮頸管ポリープと言います。
米粒ほどの小さなものから、小指くらいの長さまで伸びたものまで、大きさはさまざまです。
「ポリープ」と聞くと、胃や大腸にできるものを想像する方も多いでしょう。
ポリープは、粘膜から盛り上がって過剰に増殖したもの全般を指します。胃や大腸のポリープと同様に、子宮頸管の部位で粘膜が過剰に増殖したものが、子宮頸管ポリープです。
慢性的な炎症、女性ホルモン、感染症などが原因と考えられていますが、まだはっきりとはわかっていません。
子宮頸管ポリープができやすい年齢
妊娠・出産経験のある方を中心に、30〜50代で子宮頸管ポリープができやすいです。妊娠中にも、ホルモンバランスの影響で子宮頸管ポリープができることがあります。
HPV(ヒトパピローマウイルス)との関連性も示唆されております。
子宮頸がんや子宮内膜ポリープとの違い
名称の似た疾患として、子宮頸がんや子宮内膜ポリープがあります。似ていますが異なる病態ですので、違いについてお伝えします。
・子宮頸がん

子宮頸がんは、HPVが原因で生じる子宮頸部のがんです。
HPVが原因という点に関しては、子宮頸管ポリープと似ている部分もあります。「ポリープ=がん」というイメージを持つ方もいらっしゃいますが、子宮頸管ポリープのほとんどは良性であり、がんとは異なる病変ですので、心配しすぎる必要はありません。
子宮頸がんの前段階は「子宮頸部異形成」と呼ばれ、子宮頸管ポリープとは別の病態です。
・子宮内膜ポリープ

女性特有のポリープとして、子宮内膜ポリープというものもあります。以下の記事で詳しく解説しました。
子宮頸管ポリープとは異なり、不正出血の頻度も高く、不妊の原因となる場合もあるため、治療を積極的におすすめしています。
良性・悪性の割合とその判断
子宮頸管ポリープは、ほとんどが良性の腫瘍です。
稀ですが悪性のこともあり、全体の約0.1%で悪性、約0.5%で異形成がみられたとの報告があります。
子宮頸管ポリープが良性か悪性かは、見た目だけでは判断できません。切除した組織を検査して、悪性かどうかを正確に診断します。
参考文献:日本産科婦人科学会. 「Polyps:子宮頸管ポリープ,子宮内膜ポリープ」
原因・なぜできる?どんな人がなりやすい?

子宮頸管ポリープは、女性全体の2〜5%の方にみられ、決して珍しいものではありません。
どのような方にも子宮頸管ポリープは生じうるのですが、原因と考えられるものについて代表例を3つご紹介します。
1.ホルモンの影響と年齢的な特徴
子宮頸管ポリープは、子宮内膜ポリープと同様に、エストロゲンの影響を受けて生じる可能性があると考えられています。
2.感染や炎症との関係性
子宮頸管は外部とつながっているため、細菌やウイルスなどによる感染や慢性的な炎症が起こりやすい部位です。こうした刺激を繰り返し受けると、粘膜の修復過程で細胞が過剰に増殖し、ポリープとして形成されることがあります。
HPVと関連があるとお伝えしましたが、HPV以外の性感染症も子宮頸管ポリープのリスクを高めます。
感染しないようコンドームを着用することや、早期発見・早期治療が大切です。
3.妊娠・出産とポリープの関係
妊娠中は、子宮頸管腺が発達し、粘液の分泌や血流が増えることで、ポリープができやすいと考えられています。また、ホルモン分泌量が多くなることも、ポリープを形成しやすい要因です。
妊娠中にポリープが見つかったり、新たに生じたりした場合、出血や感染のリスクになるようであれば、必要性・安全性のバランスを見ながら切除を考えます。
頸管ポリープの感染が悪化すると感染性の流早産の原因になるため、早期発見および治療が大切です。妊娠週数が進むにつれて子宮血流量が増加することから、妊初期に対応することが望ましいです。
症状は?子宮頸管ポリープがあるとどうなる?

子宮頸管ポリープの多くは無症状で、日常生活に支障をきたさないことがほとんどです。
そのため、婦人科健診や他の症状で受診した際に偶然発見されるケースが多くみられます。
しかし、大きさや位置によっては、以下のような症状が出ることもあります。
- 性行為や運動後の不正出血
- 排便時のいきみで起こる不正出血
- おりものの変化(白っぽく、量が多い)
- おりものに血が混じる(ピンク色や茶色のおりもの)
- 排卵期に不正出血が増える
- 感染を伴いやすい(おりものの色や量、匂いの変化)
ポリープの表面はもろく、性行為やタンポン挿入などのわずかな刺激でも、出血してしまいます。
ポリープからの出血量は少ないものの、繰り返す場合や性行為後に出血がダラダラと続く場合は、他の病気との区別が必要です。
性交痛と子宮頸管ポリープの関係
子宮頸管ポリープの場合、あまり性交痛は起こりません。上記のような症状に性交痛を伴う場合は、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮内膜炎などの可能性が高いでしょう。
気になる症状があるときは、早めに婦人科を受診していただきたいと思います。
子宮頸管ポリープを放置しても大丈夫?自然に治る?

子宮頸管ポリープが悪性の可能性は低いですが、原則的には切除し、組織の検査をおこなうことをおすすめしております。
放置してもよいケース・注意すべきケース
不正出血やおりものの変化など、一切の症状がなく、大きさや性状から悪性の可能性が非常に低いと考えられた場合や、隆起性病変だけで切除が難しい場合には、慎重に経過を見ていくこともあります。
悪性でない場合や感染に影響しない場合には、放置していても健康に大きな問題にはなりません。
自然に取れる?取れない?の医学的見解
子宮頸管ポリープが自然に取れることもあります。
とくに、ポリープが大きくなり、血流が悪化した場合には、壊死して取れることはありますが、稀です。また、出産時に赤ちゃんが通るのに伴って、擦れて取れるケースもあります。
経過観察によるリスク
経過を見ていくことも可能ですが、定期的に大きさなどが変化していないか、他の疾患を合併していないか、チェックのために受診していただくことが大切です。
「子宮頸管ポリープのせいで不正出血しているのだろう」と自己判断で放置し、定期受診もされていない場合、子宮頸がんや子宮体がんなどによる不正出血があったとしても違いを区別できず、進行してしまう可能性があります。
医師の指示に従って定期的に婦人科を受診し、状態を確認するようにしましょう。
治療が必要な場合とは?処置の流れと痛み・費用

子宮頸管ポリープを治療すべきケースと、処置の流れについてご紹介します。
どんなときに切除が必要か?
次のような場合は、積極的に切除をおすすめします。
・不正出血があるとき
・おりものの量が多いとき
・大きさや性状から悪性の可能性を疑うとき
・妊娠中の流産や早産に影響する可能性がある時
上記に当てはまらない、全く無症状の方でも、処置のできない理由がなければ切除し、念のため組織検査をおこなった方がよいでしょう。
切除の留意点
子宮頸管ポリープの根本が太く、切除した際に出血が多くなりそうな方などは、入院での切除が望ましい場合もあります。
当院での処置の流れ

ご来院いただき、子宮頸管ポリープがあるとわかったら、切除のメリットやデメリットについてご説明いたします。
・処置の留意点
デメリットとして、数日間は少量の出血があること、切除時にわずかな痛みを感じる場合があること、性交渉や大量の飲酒・激しい運動を避けてもらうことをご了承ください。
痛みはほとんどないので、基本的に麻酔は使用しません。
・処置の時間
処置自体は、その場ですぐにおこなうことが可能です。5分程度で終わり、止血確認後すぐに帰宅できます。
・処置後の組織検査
組織検査をいたしますので、結果が出る頃にまたご来院ください。結果のご説明は、オンライン診療でも可能です。
切除するか迷う場合は、ご自宅でゆっくりと検討していただき、切除しようと決めた場合には改めてご予約ください。
費用の目安・保険適用の有無
子宮頸管ポリープは、保険適用で治療可能です。
診察料、検査料などをすべて含め、3割負担の方で15,000円前後となります。
妊娠に影響する?

女性器の疾患で多くの方が心配されるのは、妊娠への影響です。
妊娠中に見つかった場合の対応
妊娠中に子宮頸管ポリープが見つかった場合の対応については、状況に応じた判断が必要です。
たとえば、妊娠の初期〜中期ごろで子宮頸管ポリープがあると、絨毛膜羊膜炎を起こしたり、頸管開大につながったりすることがあるため、切除をすすめます。
不妊症との関係はある?ない?
子宮頸管ポリープは、感染がある場合、不妊の原因になることがあります。
また、子宮内膜ポリープも、不妊の原因の1つとして知られています。
妊活・治療のベストなタイミング
妊活のため、子宮や卵巣の状態をチェックにいらして、子宮頸管ポリープが見つかる方も一定数おられます。
子宮頸管ポリープは、妊娠前に切除してしまうのがよいでしょう。
妊娠中は免疫力が低下するために子宮頸管ポリープが感染の原因になってしまったり、不正出血で不安になってしまったりするためです。
感染する可能性のある子宮頸管ポリープは不妊や流産の原因になります。事前に治療することが望ましいです。
よくある質問(Q&A)

Q. ポリープを取らないと危険ですか?
子宮頸管ポリープが悪性である可能性は1%未満ですので、多くの場合は急に危険にはなりません。切除をすぐに決められない場合は、ご自宅でゆっくり検討していただければと思います。
Q. 取っても、またできることはありますか?
はい。子宮頸管ポリープは炎症やホルモンの影響で生じるものであるため、1回切除しても、別の部位に発生することはあります。再切除が必要です。
さまざまな疾患の早期発見のため、子宮頸管ポリープのある方もない方も、年に1回は婦人科で検診をおこなうことをおすすめしております。
Q. 無症状なので、切除しなくても大丈夫ですか?
無症状で、大きさや性状から悪性の可能性が非常に低いと考えられる場合は、切除せずに経過観察でもよいでしょう。ただし、大きくなってきた、出血するようになってきたなどの場合、切除をおすすめすることはあります。診断医とご相談ください。
まとめ

子宮頸管ポリープは、女性の2〜5%にみられる比較的よくある病変で、多くは良性です。
無症状で経過することも多いですが、基本的には切除をおすすめします。
妊活中・妊娠中の方も、状況に応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
自己判断で放置せず、定期的に婦人科でチェックを受けながら、安心して日常生活を送れるようにしましょう。
子宮頸管ポリープの切除自体は、出血のリスクが少ない場合には外来診療で切除可能です。
不正出血など、不安な症状がある方はお気軽にご相談ください。
オンライン診療も実施中
関連リンク
【参考文献】
公益社団法人. 日本産科婦人科学会. 産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2023
日本産科婦人科学会. 「Polyps:子宮頸管ポリープ,子宮内膜ポリープ」

白金高輪海老根ウィメンズクリニック院長
海老根 真由美(えびね まゆみ)
産婦人科医師・医学博士
埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センターでの講師および病棟医長の経験を積み、その後、順天堂大学で非常勤准教授として活躍。
2013年に白金高輪海老根ウィメンズクリニックを開院。
女性の人生の様々な段階に寄り添い、産前産後のカウンセリングや母親学級、母乳相談など多岐にわたる取り組みを行っています。更年期に起因する悩みにも対応し、デリケートなトラブルにも手厚いケアを提供しています。